今の日本には「専門医」より「かかりつけ医」が必要 受診先を1箇所にまとめる利点は意外と大きい
日本は今、地域医療の危機を迎えています。2025年には、団塊の世代が後期高齢者となり、認知症患者も大幅に増えることが予想されています。 このままでは近い将来、患者さんがかかりつけ医を見つけられなくなり、地域医療が崩壊してしまうかもしれません。 『「総合診療かかりつけ医」がこれからの日本の医療に必要だと私は考えます。』の著者、菊池大和医師が現状と課題、真のかかりつけ医の必要性、そして地域医療を守るための方策について伝えています。本稿では、同書から一部を抜粋、編集してお届けします。
■厚生労働省の「かかりつけ医」とは? 一般の人に「あなたには、かかりつけ医がいますか?」と尋ねたら、どんな答えが返ってくるでしょうか。 もちろん人それぞれ違うでしょうが、「風邪をひいたら、歩いて3分の内科に行くけど、花粉症の季節にはその先の耳鼻科に行く。1年に1回の健康診断には一駅先のレディースクリニックに行く。どれもかかりつけ医と言えばかかりつけ医だけど……」という曖昧な答えも多そうです。 厚生労働省は一般の人に向けて、「上手な医療のかかり方」について情報を発信してます。そこには「かかりつけ医」とは何か、ということも紹介されています。
かかりつけ医とは、 1 健康に関することを何でも相談できる 2 必要な時は専門の医師・医療機関を紹介してくれる 3 身近で頼りになる医師 というところを呼ぶそうです。 あらためて問いますが、皆さんの勤務する病院やクリニックは、この3点を満たしていますか? 研修先の医療機関は、この条件に当てはまっていますか? さらに、そこはあなたの家族が病気になったときに自信を持って紹介できる医療機関であり、かかりつけ医になりえますか?
現状から目をそらさずに考えてみてください。すべての条件に当てはまる医師は極めて少ないはずです。 「それは仕方がないよ。医師は自分の専門分野をしっかり診るのが仕事だから」と言いたくなるかもしれません。 しかし、開業するのがこのような医師ばかりだったら、患者さんはかかりつけ医が見つけられず、困ってしまいます。現実に多くの患者さんが、病気ごとにいくつものクリニックに通院しながら、「私の本当のかかりつけ医は誰だろう?」といぶかしく思っているケースは多いのです。