今の日本には「専門医」より「かかりつけ医」が必要 受診先を1箇所にまとめる利点は意外と大きい
そういう患者さんは複数のクリニックにかかっているぶん、トータルで受ける検査の数も多くなるので、医療費も多く支払っています。結果的に医療費の問題を加速させています。 ■「どんな症状でも、まず診察」 複数のクリニックで受診している人が、「病名がわからないから、どこに行けばいいかわからない」ような体調不良が起きたときに、「ここかな?」と思って、いつも受診しているクリニックに行ったところ、「うちでは診られない」と断られてしまう……。
このようなことは日常茶飯事です。 医師がみんな断ってしまったら、最終的に誰が診るのでしょうか。 「どんな症状でも、まず診察」する真のかかりつけ医が必要です。 患者さんの健康を守るのが医師の仕事です。そして患者さんにとっては、まずは近くのクリニックで受診するのが理想でしょう。そこから診察・治療がスタートするのです。 にもかかわらず「かかりつけ医がいない」「かかりつけ医が誰かわからない」「自分(患者さん)はかかりつけ医だと思っていたのに、医師のほうはそう思っていなかった」という事態が蔓延しています。
医学生、研修医の方々、これから開業しようと思っている医師の皆さんは、この実情をよく考えてほしいと思います。「なんでも診る」「いつでも診る」医師こそが、厚生労働省のいう「かかりつけ医」ではないでしょうか。 あなたの地域に住む、次のような高齢者の姿をイメージしてください。 75歳、1人暮らしの男性。 高血圧・脂質異常症で2カ月に1回、内科クリニックに通院している。ほかに、腰痛で整形外科クリニックに月1回、過去に軽い脳梗塞になったことがあるので、経過観察として脳神経外科クリニックに月1回、白内障など眼の病気の定期検診のために眼科クリニックに月1回通院している。
最近は少しもの忘れも出てきて不安がある。歩くときに膝が痛くなってきた。運転免許証はすでに返納し、通院は歩きやバス。子どもは遠くに住んでいる。 さて、この状況で私からいくつか質問するので、考えてみてください。 Q 「なんとなく体調が悪い」場合、男性はどこのクリニックを受診すると思いますか? Q 「なんとなく体調が悪い」のに、いつも通院している内科で「異常なし」と言われたら、男性はどうすると思いますか?