100m9秒97の日本記録更新サニブラウンは東京五輪でメダルを獲得できるのか?
9秒台突入と同じく、日本記録でもサニブラウン・ハキーム(フロリダ大)の表情は変わらない。全米大学選手権の男子100m決勝。3位でフィニッシュしたサニブラウンは、電光掲示板でタイムを確認すると、真剣な眼差しのまま次の戦いに向かう。 9秒97(+0.8)というタイムは桐生祥秀(日本生命)の9秒98を上回る日本記録。約45分後に行われた男子200m決勝でもサニブラウンは3位に食い込み、20秒08(+0.8)の自己ベストで走破した。こちらは末續慎吾の日本記録にあと0.05秒と迫る日本歴代2位の好タイムだった。 すべてのレースを終えて、ようやくサニブラウンの顔に笑みがこぼれた。複数のメディアの報道によると100mについては、「正直、あまり(日本新の)実感はないんですけど、今後はまだ速いタイムは出ると思っているので、その都度、更新していければいい。スタートに関しては今大会わりとスムーズに出れていると思うので、練習してきたことが少しずつ身についているのかなと思います」と話す。200mについては、「正直ガス欠でしたけど、ラストの1本ということで集中して、最初の100mを全力でいきました」と振り返った。 今季は大学南東地区選手権(5月11日)の100mで9秒99(+1.8)をマークして、日本人2人目の9秒台に突入。全米大学選手権の準決勝(6月5日)で追い風参考記録ながら9秒96(+2.4)で駆け抜けると、2日後の決勝で9秒97の日本記録に到達した。 9秒台連発に日本メディアは大騒ぎしているが、サニブラウンにとって、「9秒台」は特別な数字ではない。2年前から「9秒台は出るときにでは出ると思うので」とまったく気にしていなかったからだ。 一躍、東京五輪のヒーロー候補となったサニブラウンだが、本番で「メダル」の可能性はあるのだろうか。 ウサイン・ボルト(ジャマイカ)というスーパースターがトラックを去った後、世界のスプリント種目は混沌としていた。しかし、ここにきて、若くて才能のあるスプリンターたちが台頭している。 100mはダイヤモンドリーグ上海大会(5月18日)で21歳のノア・ライルズ(米国)と23歳のクリスチャン・コールマン(米国)が今季世界最高の9秒86をマーク。そして全米学生選手権で22歳のディバイン・オドゥドゥル(ナイジェリア)が、このタイムに並んだ。