三菱UFJ銀、前代未聞「貸金庫スペアキー」悪用で謝罪…元行員の刑事告発「検討」。被害は十数億円
三菱UFJ銀行で発生した女性行員(当時)による貸金庫内の金品の窃盗事案を巡り、同行は12月16日、都内で記者会見を開き、半沢淳一頭取が「信頼、信用という銀行ビジネスの根幹を揺るがすものであると厳粛に受け止めており、お客様や関係者の皆さまに心よりお詫びする」と謝罪した。 【全画像をみる】謝罪する三菱UFJ銀の経営陣と窃盗事案の詳細(全8枚) 現時点で判明している被害者は約60人、被害総額は時価10数億円に達すると同行は説明する。元行員は現時点で懲戒解雇となっている。今後、元行員への刑事告発なども視野に事態の全容解明と事実関係の調査を進める方針だ。
40代女性管理職がスペアキー不正利用。一部は「投資に流用」
貸金庫での窃盗は、今年に入り利用者からの相談で発覚した。相談を受け、行内で調査を進めたところ、江古田支店、練馬支店、玉川支店に営業課長などとして勤務していた40代女性行員の関与が浮上。本人が事実関係を認め、10月末に事案が発覚した。 三菱UFJ銀行によると、元行員は支店長代理も兼務していた人物。スペアキーを不正利用する形で貸金庫から金品を盗み取ることを繰り返していた。また、元行員への聞き取り調査から、江古田支店に在籍した2020年4月以降、2024年10月までの約4年半、窃盗を続けていたことも判明した。 三菱UFJ銀行では、スペアキーの不正利用という前代未聞の事態を受け、再発防止策として貸金庫のスペアキーを本部で一括管理する対応策を2025年1月中に実施する予定だ。 半沢頭取は会見で、元行員の犯行の動機や手口について「捜査に支障が出る可能性がある」として「詳細の回答を差し控える」とする一方、元行員が被害者に「大変申し訳ないことをした。捜査に協力したい」と話していることや、用途について「投資などに流用した」と供述していることを明かした。 三菱UFJ銀行は事案発覚後、元行員の供述などをもとに被害の可能性が高い利用者に連絡し、独自に被害補償を進めている。現金と金品の内訳など、被害額に関しては「捜査に影響するため詳細は差し控える」(三菱UFJ銀行)と明言を避けているものの、会見を開いた12月16日までに約3億円分の補償が進んでいるという。
刑事告発の可能性も。元行員への請求は「検討」
ただ、三菱UFJ銀行が進める被害補償については、SNSなどでは元行員を刑事告発した上で、被害額を弁済させるべきとの声が根強い。 刑事告発の可能性について同行の丹後健史常務執行役員CHRO(最高人事責任者)は「今、全容解明に向けて行内で調査しているが、(元行員は窃盗した金品について)当行を含め複数の他行口座を使っていることもあり、当行での調査にも限界があるため、警察にどのようにしていくべきか相談していくところ。これ以上は警察の捜査に影響する可能性があるが、私どもとしては全容解明に全力を上げていく」と述べるに留めた。
樋口隆充