日産、いばらの道か? ホンダから突き付けられたハードルは待ったなし
しかし、関氏は1カ月足らずで退社、日本電産(現・ニデック)に移籍、社長を務めたのち、鴻海の電気自動車事業のCSO(最高戦略責任者)に就任します。関氏が日産を去った理由については縷々言われていますが、このような経緯を見ると、関氏の日産への逆襲という構図にも見えてきます。運命の皮肉というほかありません。 一方、冒頭お伝えした日産の苦境は、一言で言えば北米・中国市場の不振によるもの。北米では売れ筋になりつつあるHEV=ハイブリッド車が投入されず、中国ではEV=電気自動車の激しい競争に太刀打ちできていないというものです。 いわば商品力の低下です。「売れる車がない」「買いたい車がない」…それはゴーン体制の時から言われてきたことであり、小欄でも何度か指摘したことがあります。そのツケが一気に噴き出してきたとも言えるでしょう。HEVが投入できていないのも、元をただせば、ゴーン体制で「HEVはつなぎの技術」と切り捨て、EVに「全振り」したことにさかのぼります。 日本国内を見ると、マーチというコンパクトカーがありました。1982年に排気量1000ccの「リッターカー」として登場、車名は一般公募によるものでした。2代目は日欧のカー・オブ・ザ・イヤーに輝く名車となり、日産の屋台骨を支えました。その大切なマーチを日産は4代目で終焉させました。正確に言うと、マーチは欧州ではマイクラという車名で、2017年に5代目にモデルチェンジされましたが、日本市場では4代目のまま。大きな改良もなく、いわば「棚ざらし」の挙句、2022年で日本市場では販売終了となりました(欧州市場のマイクラも2023年に販売終了)。同様にキューブやジュークというコンパクトクラスの車種は整理されました。 しかし、このクラスは他社ではトヨタ・ヤリス、スズキ・スイフトなどの売れ筋もあり、決して小さなマーケットではありません。このクラスの需要をどうするのか、日産販売店の関係者に聞いたことがありますが、「ノートや軽のデイズ、ルークスに誘導する」と話していました。しかし、メーカーの都合良く、ユーザーは動きません。このクラスで選ぶべき日産車がなくなったユーザーの中には他社に流れた人もいると思います。