「生活が苦しく、心が痛む」ニューヨークのルーフトップバーで米大統領選討論会を見ていた若者たちの本音
■「人の家のペットの犬を食べている」 一方、トランプ氏は、バイデン氏とハリス氏は「史上最悪の大統領と副大統領」と非難。理由は、高インフレで人々が生活に苦しんでおり、中西部オハイオ州スプリングフィールドという街では、一部の住民が困窮のため「人の家のペットの犬を食べている」と言及。司会に事実ではないと言われると、「彼らが自分に現地で語った」と主張する場面も見られた。 また、2021年1月6日、トランプ支持者らが首都ワシントンの連邦議会議事堂を襲撃し、死者が出た事件をトランプ氏が扇動したとして質問された。しかし、「(ブラック・ライブス・マター=BLM運動のデモで)ミネソタ州ミネアポリスに火が放たれたことなど(リベラル派のほうが)起訴されるべきだ」などと"応戦”した。
ほかの質問についても形勢が悪くなると、バイデン・ハリス政権が中南米からの不法移民をオープンに受け入れ、何百万人もの犯罪人やテロリストがアメリカを破壊し、犯罪率も増加していると主張した。アンカーは即座に「犯罪率は事実、下がっている」と指摘した。 トランプ氏にとっては、前回のクリントン氏に続き2人目の女性大統領候補となるが、2016年のヒラリー・クリントン元国務長官との討論会でとった行動は、今でも語り草となっている。
クリントン氏が観客からの質問に答えている間、トランプ氏は、自分の演台を離れてクリントン氏の後方に回り、睨み付けながら徘徊した。クリントン氏が話しながらステージ上を歩くと、トランプ氏は彼女のすぐ後ろを歩き回ったり、真横から顔をじっと見たりした。 その威圧的な行動を「セクハラ」ととらえて、多くの女性視聴者が嫌悪感を示した。クリントン氏も後に回顧録で「非常に不快だった。鳥肌が立った」と書いている。 ■どの調査でも僅差の戦いになっている
今回も、トランプ氏は身長が192センチなのに対し、ハリス氏は164センチとアメリカ人では小柄なほう。過去には男性の大統領候補が身長を高く見せるために討論会で演台の後ろに箱をおいたことがあった。しかし、トランプ氏はSNSで「討論会で箱などの使用は認められないだろう。不正の一種だ」と牽制までしている。 アメリカの『ニューヨーク・タイムズ』紙とシエナ大学が実施した討論会直前の世論調査(3~6日)によると、ハリス氏の支持率は47%、トランプ氏は48%と僅差でトランプ氏がリード。一方、全米の調査機関の結果を合計したものでは、ハリス氏が49%、トランプ氏が47%(10日現在)とこれも僅差だ。
はたして今回の2人の主張は、高インフレに喘ぐ若者や、気持ちを決めかねている有権者たちにどう響いたのだろうか。
津山 恵子 :ジャーナリスト