「生活が苦しく、心が痛む」ニューヨークのルーフトップバーで米大統領選討論会を見ていた若者たちの本音
バイデン氏から候補が変わって勢いがあると言われるハリス氏だが、今回の大統領選は非常に僅差の戦いとなっており、いつにも増して激戦州における「誰に投票するか気持ちが固まっていない」無党派層の動きが重要となっている。 ■トランプ氏は怒りを露わにする展開に こうした中、「極度の接戦の膠着状態」(ネイト・コーン、ニューヨーク・タイムズ政治アナリスト)の流れを変えたい2人の初対面でしかも一騎打ちとなった討論会。ハリス氏は時に笑みを浮かべ、落ち着いて事実を述べ、徐々にトランプ氏の顔に泥を塗る発言を繰り出し、トランプ氏の気分を逆撫でした。
一方、トランプ氏は司会のABCテレビアンカーらに発言は「事実ではない」と数回に渡りダメ出しをされ、90分間の討論の前半ですでに声を荒らげるようになった。質問の答えをはぐらかし、怒りを露わにするというトランプ陣営にとっては「避けたいシナリオ」に陥った。 アメリカメディアによると、ヒラリー・クリントン元国務長官vs.トランプ氏の2016年大統領選挙以来、テレビ討論会で両候補がステージ上で握手をしたことはないという。しかし冒頭、演台に向かおうとしたトランプ氏に大きく近寄り、笑顔で右手を差し出したのはハリス氏。初対面の2人は、大統領候補として8年ぶりに軽く手を握った。
ハリス氏は、討論会会場に観客がいないテレビ中継オンリーであることを意識し、カメラをまっすぐに見つめ、テレビの前の有権者に直接訴えることに努めた。 ハリス氏は、「トランプ氏は、人種や性別でこの国を分断させようとしている。私は、人々を明るい気持ちにさせて、失望させることがない大統領になる。人々が夢や希望を持って何が悪いのか」「過去を捨てて、未来の新たな道に進もう」と畳み掛けた。 また90分間の前半でハリス氏は、視聴者にこう言った。
「視聴者の方は、トランプ氏の選挙集会に行くべきだ。そうすれば、彼が理にかなっていないことばかり言うのを聞くことになり、人々は集会が終わる前に退席するのを見られるから」 これは、バイデン氏が戦線撤退するまでは、集会で数千人を集めてバイデン大統領の集会に差をつけていたトランプ氏を明らかにいらだたせた。しかし、ハリス氏はあえて先制攻撃に賭けた。 ハリス氏は、7月21日にバイデン大統領が選挙戦から撤退を表明してからわずか1カ月半しか経っていないこともあって、トランプ氏に比べてメディアへの露出時間が短い。この1回きり(とされる)討論会で、11月5日の投開票日までの流れを有利に決めたいという正念場だった。