デニムづくりを通じてものの価値を問い直す:「ITONAMI」
ものを購入するときの基準はなんだろうか。CMで見かけたからか、それとも好きな芸能人が紹介していたからだろうか。どんな理由であれ、人は外からの影響によって行動してしまうことは多々ある。だが、ここで立ち止まって、もう一度自分の気持ちにしたがって、ものを選んでみてはどうだろうか。 そうしたものとの付き合い方を提案するのが、デニムブランド「ITONAMI(イトナミ)」を立ち上げた山脇耀平さんだ。EVERY DENIMという岡山の魅力的な伝統技術からできるデニムを兄弟で販売していたブランドが、心機一転、新ブランドとして発足した。その転換の背景には、なにがあったのか。 今回、山脇燿平さんに同社の活動を通じて考えてきた、ものづくりのあり方やものとの付き合い方を伺った。
ものの魅力を伝えたい
ーEVERY DENIMを立ち上げた経緯を教えてください。 EVERY DENIMは、2015年に私と弟の2人で創業したデニムブランドになります。自分たちが届けるものを長く、愛着を持って使っていただきたいという思いがあったので、デニムをお客様に直接お渡しするために、地域を渡り歩きながら販売をしていました。 ブランドを立ち上げようという考えは、弟のものでした。大学で岡山に行くことになり、新しい場所で地域の文化に触れられる活動をしたいという思いがあったようです。人づてに職人さんを紹介していただき、はじめてものづくりの現場を見たときに大いに感動したようで、職人さんの思いなどを自分たちの目線で発信できないかと考え、兄弟でブランドを立ち上げました。
ーそこからITONAMIへブランド名を変更されたのは、どんな理由があったのでしょうか。 EVERY DENIMを始めたとき、瀬戸内が持つ産地の魅力や技術力の高さなど、製品の魅力を伝えるつもりでした。ところが、気づいたときには私たちが兄弟で立ち上げたブランドであることや、対面で手売りをする販売スタイルに注目が集まっていました。その結果、私たちがある意味でキャラクター化してしまい、肝心の商品にスポットライトが当たらず、もどかしい思いをしました。 本来、サービスやブランド名は自分たちのアイデンティティを表すものです。うちらのやり方はこうだよね、と自分たちの進んでいく道を照らしてくれるはずなのに、それを感じられなくなってしまったのです。 あらためて自分たちの原点を確認するために、ブランド名のリニューアルを図ったのがITOMANIの誕生になります。