夫婦同姓の義務は「経済的損失」 棚上げにされる"別姓議論" 女性経営者が抱く強い違和感
選択的夫婦別姓の導入について、多くの政党は推進を掲げる。一方、自民党は石破茂首相が総裁選で、導入に前向きな姿勢を示していたものの、公約では「運用面で対応する形で一刻も早い不便の解消に取り組む」として、後退した。今後の夫婦の氏制度の在り方についても「どのような形がふさわしいかを含め合意形成に努める」としている。日本維新の会は、旧姓使用にも法的効力を与える独自の別姓制度を創設するとし、参政党は導入に反対している。
最高裁「国会で論じ、判断する事柄」
世界経済フォーラム(WEF)が世界各国の男女格差をまとめた24年版「ジェンダーギャップ指数」で、日本は対象146カ国の中で118位。経済、政治の分野で依然として大きな格差がある。 法務省によると、結婚により夫の姓を名乗る女性は95%にのぼる。旧姓の通称利用は拡大されてはいるものの、契約や各種手続き、キャリア形成、海外渡航などで不利益を被るおそれがある。 法相の諮問機関である法制審議会は96年、「選択的夫婦別姓」の導入を答申。これを受け、法務省は民法改正を準備していたが、自民党の保守系議員らの反対を受け、国会提出は見送られた。 導入を求める声は根強く、訴訟も起こされてきた。ただ、最高裁は15年と21年、いずれも夫婦別姓(氏)を認めない民法などについて「合憲」と判断した。一方、15年の判決は、制度のあり方は「国会で論ぜられ、判断する事柄」とし、国会での議論を促した。 こういった経緯から、東海大学の永山茂樹教授(憲法学)は「国会は宿題をサボっている」と指摘する。また、姓を自分で選ぶことは、憲法13条の幸福追求権に関わるとし、こう話す。 「姓に愛着を持つ人、旧姓で築いたキャリアを大切にしたい人、パートナーの姓になることを望む人。それぞれの幸福と自由をできるだけ尊重すべきだ、というのが憲法研究者の共通理解です」【平塚雄太、稲垣衆史】
同じ性を選べるのも「選択的」夫婦別姓 平塚雄太記者
取材した女性研究者は「後輩たちにこんな思いをしてほしくない」と話していました。2015年の最高裁判決では、山浦善樹裁判官(当時)が個別意見として、「(別姓を選べない)不利益は極めて大きい」と指摘しました。夫婦同姓だったドイツ、タイ、スイスなどで選択的夫婦別姓が導入されたことにも触れました。私はスイスで暮らしたこともありますが、違う姓の家族は平穏に生活を営んでいました。「家族の一体感が薄れる」との導入への反対意見はありますが、同じ姓を選べるのも「選択的」夫婦別姓です。