夫婦同姓の義務は「経済的損失」 棚上げにされる"別姓議論" 女性経営者が抱く強い違和感
研究職は、自身の名前で発表する論文などで過去の業績が重視される。だから、50代の女性研究者は、姓を変えたくなかった。二十数年前に結婚。同じ研究職だった夫と議論した末、くじ引きで負けた女性が戸籍上の姓を変えた。そこから苦労が始まった。 結婚した時に夫婦で同じ姓にするか、別々の姓にするかを選べる選択的夫婦別姓制度。前向きな政党は多いものの、自民党は慎重姿勢を崩していない。 【写真まとめ】経団連は選択的夫婦別姓求める提言を発表
「カッコの意味が通じない」
日本は法律で、夫婦別姓が認められていない。その代わりに、ビジネスの現場などで旧姓の通称使用が広がっている。 国際的な学会に所属する研究者の女性は、学会の年会費をクレジットカードで支払っている。カード名義は戸籍名だが、学会の登録は旧姓。このため、支払い後にいつも「名前が違うが、自分は会費を払った」とのメールを学会事務局に送る。 2023年6月、経団連は政府に「選択的夫婦別姓」の早期導入を求める提言をまとめた。 夫婦別姓を認めない今の制度は、女性の活躍が広がる中で海外でのビジネスなどに支障が出かねず経済的な損失を招く。にもかかわらず、長年にわたり国会での議論が棚上げされてきたことに対し、経団連として強い危機感を示した。 一方、導入に慎重な立場の国会議員らは、旧姓を通称使用する分野の拡充で対応できるとの考えを示している。
これに対し、研究者の女性は「現場を知らない人たちの意見ですよね」。 女性は海外の空港で、入国手続きの度に説明を繰り返してきた。 日本は夫婦同姓を法律で義務づけている。戸籍上は夫の姓で、仕事では旧姓を使っているので、パスポートに二つの姓が表記されている。カッコでくくられている姓は旧姓だ、と。 でも、入国審査官は、どうも納得できないようだし、とにかく説明に時間がかかる。「何より、カッコの意味が通じない。これを理解してもらうのが大変なのですよね」と苦笑いする。 選択的夫婦別姓の導入に反対する理由として「家族の一体感を損なう」との主張がある。夫婦で異なる姓が珍しくない海外での生活を経験している30代の女性研究者は、こう指摘する。 「それだったら世界中の家族が崩壊していますよ」