英サッカー界を揺るがす性的虐待スキャンダル 元代表選手ら次々と告白
11月中旬、イングランドの元プロサッカー選手のアンディ・ウッドワード氏が自身のユース時代に受けた性的虐待の詳細を英ガーディアン紙に告白し、その後の報道でイングランドやスコットランドのサッカークラブでコーチや用具係による少年選手への性的虐待がいくつも判明した。現在判明しているだけで、これらの性的虐待は1970年代から90年代にかけて英国内の50以上のクラブで発生しており、その中には世界的に知名度の高いクラブも含まれている。過去にはカトリック教会の聖職者による性的虐待の事実が世界を震撼させたが、イギリス国内のサッカークラブで少年を狙った性的虐待が多発していたニュースは、ようやく被害者が重い口を開き始めたこともあって、詳細が少しずつ明らかになりつつある。 破産申請続く米カトリック教会、性的虐待の和解は進められるか?
判明しているだけで350人以上が被害
長年の沈黙を破って、少年時代に受けた性的虐待について証言を行ったのは、イングランドのベリー(現在は3部)やクルー・アレクサンドリア(現在は4部)でディフェンダーとしてプレーしたアンディ・ウッドワード氏で、2002年に現役を引退してからは警察官としてセカンドキャリアを築いていた。現在43歳のウッドワード氏は、匿名を保持する権利を放棄してガーディアンの取材に答え、練習生としてクルー・アレクサンドリアに所属していた80年代に、当時のユース担当コーチだったバリー・ベネル元服役囚に性的虐待を受けていたと語った。 ベネル元服役囚はクルー・アレクサンドリアやマンチェスター・シティ、ストークといったイングランドのクラブで少年チームを担当するコーチとして働いていたが、1994年に遠征試合の最中にチームのメンバーだった少年を強姦した罪で禁固4年の実刑判決を受けている。出所後まもなくして、6人の少年に23回の性的虐待を行った罪で再び有罪となり、さらに8年間を刑務所で過ごしていた。 ウッドワード氏の告白が記事になってから間もなくして、他に数名の元プロ選手が少年時代に性的虐待の被害に遭っていたことをカミングアウトした。自らの性的虐待の事実について言及した元選手には、有名選手も含まれていた。トッテナム・ホットスパーやブラックプールで活躍し、1990年代前半にはイングランド代表にも召集されたポール・スチュワート氏や、1985年から1993年までストライカーとしてマンチェスター・シティで280試合以上に出場したデーヴィッド・ホワイト氏らが重い口を開いている。 英BBCによると、過去に少年選手らに対する性的虐待が発生したクラブは少なくとも55チーム存在し(プロ、アマ合わせて)、被害を訴えている元選手はすでに350人に達している。イギリス国内の21か所で地元警察が捜査に着手しており、イングランド・サッカー協会(FA)も数名のクラブ関係者から聞き取りを行う予定だ。