鶏卵輸出10年で20倍に 最大のお得意先は香港 新鮮さや卵黄の濃さ評価
衛生管理や卵黄の色味といった品質から海外で評価を高める、日本産の鶏卵。その輸出額は10年前と比べて20倍以上に急増している。最大の輸出先となる香港では、量販店で売り場が拡大し、すき焼き店やすし店など日本食レストランでの提供も活発だ。訪日観光をきっかけに「日本で食べたおいしさを帰国後も楽しみたい」とニーズが高まり、消費場面が広がっている。 財務省の貿易統計によると、鶏卵(殻付き生食用)の2023年輸出額は68億円、数量は約1・8万トンと13年比でそれぞれ27倍、18倍だ。23年は国内で鶏インフルエンザ発生が広がった影響から前年を下回ったものの、需要自体は旺盛だ。 輸出先の9割を占めるのが香港だ。現地の最大手となる食品スーパーでは、鶏卵売り場の3割程度が日本産になる。供給する出雲ファーム(山口県)の「新紀元卵」(1パック10個入り)は5月末時点では28香港ドル(約560円)で販売する。同ファームでは卵黄の色味を示す指標が最高値の18である「新紀元卵 暁」(同)も輸出している。同時期57香港ドル(約1140円)と高単価ながら、鮮度の高さが支持され販売を伸ばす。 香港政府によると23年の日本料理店の店舗数は1470店舗で、異国料理として最も多い。背景には香港の訪日観光客の増加がある。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、23年の香港からの訪日観光客数は211万人に及んだ。「レストランを訪れた際に日本食への口コミが広がった」(香港貿易発展局) 日本養鶏協会は、香港のレストランで日本産鶏卵を使用したコラボメニューを提供するなど、プロモーション活動を行う。香港の消費者に向け、日本産に関する知識や卵を使用した日本食レシピを発信し、新鮮さや安全性への理解を促す。
今後も需要拡大の可能性大
現地にある「すき焼き中川」は今年4月のオープン以降、ランチ・ディナーともに予約が埋まり、売り上げを好調に伸ばす。兵庫県産の「日本一こだわり卵」を使用しており、1人前780香港ドル(約1万5600円)のディナーコースでは、肉の味を引き出す卵の食べ方で、卵を軽く蒸したものと、ふんわり泡立てた白身と卵黄を合わせたものの2種類を用意する。 香港で出回る鶏卵を見ると、日本産は中国に次いで2番目に多いが、シェアは1割程度にとどまる。トップの中国産は安さを武器に約8割を占めるが、品質面で日本産は優位性がある。JA全農グループの全農國際香港有限公司の中西誠代表取締役社長は、「飲食店は新鮮さや卵黄の濃さを重要視する傾向にあり、今後も日本産鶏卵の需要拡大の可能性は高い」と展望する。(廣田泉)
日本農業新聞