【日本市況】円が1カ月ぶり高値、米求人懸念で株式は続落-債券上昇
(ブルームバーグ): 5日の日本市場では、円相場が対ドルで1カ月ぶりの高値を付けた。米国の求人件数が低調で、投資家が注目する8月の米雇用統計に警戒感が高まる一方、毎月勤労統計で国内賃金の伸びが市場予想を上回り、円買い・ドル売りが先行した。
日本銀行の高田創審議委員が講演で日本経済の下押しリスクについて言及すると、円は伸び悩む場面もあったが、午後は買い直された。米景気の先行き不安を背景に株式は続落し、安全資産の債券は上昇した。
米労働省が4日に発表した7月の求人件数は市場予想以上に減少し、2021年1月以来、3年半ぶりの低水準となった。SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、同統計の減少は「衝撃的で、雇用の下振れ懸念が強い中でドルは買えない」と言う。
厚生労働省が5日朝に発表した毎月勤労統計調査で、基本給に当たる所定内給与(一般労働者)はエコノミストが注目する共通事業所ベースで公表が開始された16年以降で最高となった。日銀は2%の物価目標の実現のためには3%の賃金上昇が必要との見方を示している。
外国為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=143円台前半に上昇。6日に発表される米雇用統計を前に、大幅な利下げへの警戒感からドル売り・円買いの動きが広がった。7月の毎月勤労統計調査(速報)で賃金の伸びが予想を上回ったこともあり、一時は8月5日(141円70銭)以来の高値水準を付けた。
日銀の高田審議委員の講演を受けやや売り戻される場面もあったが、午後は再び円高・ドル安の勢いが強まった。高田委員は5日、石川県での講演でこれまでの米欧の利上げが急だっただけに、その影響が生じれば日本経済を下押しするリスクがあると指摘。金融政策スタンスの違いから金融市場に変動が生じる可能性もあり、「当面は内外の動向を慎重に見守る必要がある」と発言した。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、米国で雇用の冷え込みを受けて大幅利下げの織り込みが進む一方、国内では賃金上昇で日銀による早めの追加利上げが意識され始めており、「両面から円高・ドル安圧力が加わっている」と話した。