「新興・スタートアップ企業」の出現率、北九州市など福岡県勢が台頭
各自治体で多様な支援策、呼び込み競争は今後さらに激化か
2022年11月28日に政府が発表した「スタートアップ育成5か年計画」を皮切りに、支援策もさまざまに講じられるなど、スタートアップ支援はもはや「国策」となった。自治体レベルでは雇用の創出や企業誘致などを含め地方創生の一つとして位置づけられ、新興・スタートアップ企業は地域経済を活性化させる起爆剤として期待されている。
そこで、帝国データバンクでは各市区郡における設立5年未満(2019年以降設立)の企業の割合を算出した。その結果、北九州市の小倉北区・小倉南区が11.0%で最も高く、同市八幡西区(8.9%)や福岡市中央区(7.7%)といった福岡県勢の台頭が目立ち、全国(3.6%)を大きく上回った。 加えて、愛媛県松山市(9.3%)や香川県高松市(8.9%)など西日本エリアで高い。また、横浜市中区(6.9%)や東京都渋谷区(6.8%)、同港区(6.6%)といった都心部も上位となった。 上位に並んだ北九州市は「スタートアップの街北九州」「日本一起業家に優しいまち」を掲げ、国家戦略特区に指定されている強みを活かし、スタートアップを中心にスモールビジネスを含め多様な支援策が奏功しているといえよう。他にも愛媛県松山市では「NEXTスタートアップえひめ」プログラム、香川県高松市ではオープンイノベーション拠点「Setouchi-i-Base」の整備、横浜市中区では成長支援拠点「YOXO BOX(よくぞボックス)」の開設など、独自の取り組みがみられる。 さらに2024年5月に「Tokyo Innovation Base」(東京都千代田区)、同年10月に「STATION Ai」(名古屋市昭和区)がそれぞれ導入段階を経て本格オープンするなど、大規模な支援策も相次いで発表されている。地域の特色を活かした取り組みが今後も盛り上がりを見せるだろう。
東京23区では渋谷区がトップ 上位エリアは大手デベロッパーや行政など官民の動きが活発
日本で最も新興・スタートアップ企業が集う東京23区をそれぞれみると、渋谷区が6.8%で最も高かった。渋谷区は東急グループが中心となったインキュベート施設の整備や行政による独自の認定支援制度「S-Startups」、札幌市とのエコシステム形成に向けた連携協定の締結など、官民の取り組みが機能しているといえよう。加えて、サイバーエージェントやディー・エヌ・エーなどスタートアップ企業から上場企業へと成長し、現在は支援側へと回る好循環も複数みられる。 また、新興・スタートアップ企業数が23区内で最も多い港区も6.6%で渋谷区に肉薄し、千代田区も6.4%と高い傾向にある。多くの大企業や投資ファンドが本社を置くこのエリアで設立する新興・スタートアップ企業は多い。幅広い業種が集中・蓄積されている地域であるばかりでなく、上記の各エリアでは大手デベロッパーが、スタートアップ向けオフィスを整備していることも高水準となった背景にあげられる。