2024年、ブラジル音楽界で話題になったグループ、オス・ガロチン
カエターノ・ヴェローゾモ応援
2024年も残すところ数日となった中、ブラジルの各メディアに2024年を総括する記事やコラムが続々と投稿されている。 音楽関連でもさまざまなサイトが今年を振り返っている。 リニケル、パブロ・ヴィタール、グロリア・グルーヴ、イヴェッチ・サンガーロ&ルヂミーラのをはじめ話題の多っかた2024年だが、そんな中、国内外で注目されたグループのひとつであるR&Bトリオ、オス・ガロチンも各メディアで話題となっている。 オス・ガロチンは、アンシエッタ(ルカス・アンシエッタ)、クペルチーノ(ヴィトール・クペルチーノ)、レオ・ギマ(レオナルド・ギマランイス)によるグループ。2018年にクペルチーノとレオが出会い、さらに2人は2019年にアンシエッタと出会ったという。 当初彼らは、3人で曲を作ることもあったが、個々がソロ・アーティストとして活動していくことを夢見て、互いの友情を育んでいたという。 クペルチーノはジョルジ・ヴェルシロへの曲提供や、ヴィトール・クレイとの共作などでも知られている。 地元であるリオデジャネイロ州サン・ゴンサーロで音楽家仲間の集まりに積極的に参加していた3人は、カエターノ・ヴェローゾ宅の音楽家の集いで注目されるようになり、参加していたジュリエッチやフーベウなどが彼らについて投稿しはじめると、じわじわと話題になり始めた。 最終的に3人がトリオとして活動することを後押ししたのはカエターノのパートナーで音楽プロデューサーのパウラ・ラヴィーニだった。 2023年8月に最初のEP「オス・ガロチン・セッション」を発表している。 2024年1月に発表した、カエターノ・ヴェローゾをゲストに迎えたシングル「ノッサ・ヘゼーニャ」で一躍注目を集め、5月に1作目のアルバム「オス・ガロチン・ヂ・サン・ゴンサーロ」を発表した。 「G1」の“ポップ&アート”欄の音楽担当コラムニストのマウロ・フェヘイラは12月22日付のコラムで、2024年の総括として、「オス・ガロチンはブラジル音楽の偉大な啓示である」と記している。 マウロ・フェヘイラはオス・ガロチンを「2024年のブラジル音楽を振り返るには欠かせない存在であるリオデジャネイロのトリオ」と紹介して、彼らのアルバムを「北米のR&Bやソウル・ミュージックを基調にしたサウンドの活気、トロピカルな味付けと巧妙なブラジルらしさを持った作品」と評している。 サンバが国民的な音楽として浸透しているブラジルでは、サンバの要素(主にリズム)が強いほうが“国産”の音楽であるという立場で評されることが多く、反対にそれが希薄であれば、“ブラジルらしさに欠ける”と評されることも少なくない。しかしマウロ・フェヘイラは、オス・ガロチンのアルバムは「国粋主義者の月並みの常套句が聞かれることもなく」この作品は届けられたと記している。 国内の評論家にも支持されたオス・ガロチンは、第25回ラテン・グラミー賞でも、最優秀新人賞を含む複数の部門でノミネートされ、「ポルトガル語圏最優秀ポップ・コンテンポラリー・アルバム賞」を受賞した。 またレオとクペルチーノはそれぞれ、トリオの協力を得て個々の名義でのEPも発表していたが、12月にはアンシエッタもソロEP「ルカス」を発表している。今後もそれぞれのソロ活動はグループの活動と並行して行われるという。 マウロ・フェヘイラはコラムを「2024年にアンシエッタ、クペルチーノ、レオが積み重ねた経験は、細分化されたブラジル音楽の市場の中で、このトリオをさらなる成功に導くだろう」と締めくくっている。 「ローリング・ストーン」(ブラジル版)は」12月23日付でオス・ガロチンのインタビューを掲載した。同誌も「ブラジル音楽市場にとって実りの多い年だった」2024年、オス・ガロチンは「傑出した存在」だったと記している。 インタビューでは、“4人目のガロチン”ともいえるグループの作品のカギを握るサウンド・クリエイター、ジュリオ・ハポーゾの存在にも触れられている。 レオは「5、6年前にヨウンが作ったサウンドを聴いたとき、“これは誰がプロデュースしているんだ?”って思たんです。私たちにはこの人物が必要だ、と」と語っている。 クペルチーノは「私たちの曲づくりには3人の持ち味がミックスされています。友情も歌のエネルギーも、音楽の一部として。これはもう、一体となっているんです。そして音楽を制作する上で、完全な一貫性を保つ必要がありました。ハポーゾ以外に最適なプロデューサーはブラジルにはいませんでした」と語っている。 また、記事はトリオにおける3人の役割を「レオ・ギマは、構造的でかつ軽やかなヴォーカルでグルーヴを作り出し、アンシエッタは、スピード感、会話のようなラップ、ブラジル・テイストを武器にR&Bの要素を主に担い、クペルチーノはプロデューサーのジュリオ・ハポーゾの指揮により導かれた素材と共に、MPB(ブラジルノポピュラー・ミュージックラー・ミュージック)の音楽性を加え、3人(+1人)によるを混合音楽を補完する枠割り」と解説している。 クペルチーノは、オス・ガロチンは3人の経験が結集した存在で、個々の活動も並行して行われていくと語っている。 「オス・ガロチンはバンドではなく、どんなことも起こりえるプロジェクトです。この先も何が起こるかは予測不可能です」(ヴィトール・クペルチーノ) (文/麻生雅人)