「消滅可能性自治体」県南に集中…10年前と構図変わらず 県、工業団地整備や振興策で格差解消めざす
南阿蘇村は45・1ポイント改善の5・9%減、五木村は45・3ポイント上昇し30・8%減に減少率を圧縮した。両村は、共に移住推進や、定住に向けた子育て支援策の充実が好影響をもたらしたと分析。具体的には、空き家の利活用促進、高校生までの医療費無償化、不妊治療費助成などを挙げた。 消滅可能性自治体を脱した9自治体でも、若年女性人口の減少率が「消滅可能性」ラインの50%以上に近い自治体は多い。南関町は49・6%、人吉市47・6%、あさぎり町46・7%など5自治体が40%台だった。 県内全市町村のうち、減少率が最も大きかった自治体は、豪雨災害にも見舞われた球磨村の75・2%。以下、相良村70・7%、芦北町63・3%、美里町62・7%と続いた。 ◆住民の幸せ大切にする政策を 熊本大文学部・牧野厚史教授 人口戦略会議が公表した消滅可能性自治体は、熊本県南部を中心に山間地域の自治体の多くが対象となった。「消滅の可能性」と指摘された地域の未来をどう考えればよいか。環境社会学・地域社会学が専門の牧野厚史・熊本大文学部教授(63)に聞いた。(丸山宗一郎)
-「消滅」という言葉は危機感を抱かせます。 「まず言っておきたいのは、自治体が消滅することはあり得ない。どの地域でも必ず戻ってくる人がいるからだ。『消滅』という言葉に違和感はあるが、人口減少を真剣に考えてもらうために、あえてこの言葉を用いたのではないか。調査の根拠となった若年女性人口の減少幅が、50%以上になったかどうかで一喜一憂する必要はない」 -日本の人口減少の流れはいつ頃からか。 「1970年代には人口が減っていくことは分かっていた。この時点で対策を打てばよかったが、平均余命が長くなる中、国も危機感が薄かった。日本の人口が1億人を超えたのは60年代末から。1億人時代の期間そのものは、まだ短い」 -人口減の背景は。 「平成の市町村合併の影響はある。中山間地は、役場、学校などが地域の中心部に統合された。関係する人たちが周辺部の旧町村域から出て行くのに拍車がかかったことは否めない」