光合成を行う生物はいつ誕生したのか?地球生命史年表が書き変わる大発見に迫る!
そもそも「光合成」ってどんな仕組み?
生物は複雑な仕組みでエネルギーを獲得していますが、その根本的な原理は単純な物理と変わりません。 物理では、図のように場所Aにある物体には重力によって位置エネルギー(ポテンシャル・エネルギー)があると考えます。高い場所から低い場所に落ちると、それが運動エネルギーになる。たとえば水力発電は、それを人間が使うことのできる電気エネルギーに変換しているわけです。 化学や生物の世界で起きていることも、構図はそれと同じ。ある場所にある物質A(電子)にポテンシャル・エネルギーを与えているのは、重力ではなく電気陰性度(原子が電子を引き寄せる強さの相対的な尺度)です。 生物は、電子が動くときに放出されるエネルギーを、酵素を介在させることによって、自分たちが活用できるエネルギーに変えている。ごく簡単にいえば、これが生物のエネルギー獲得システムです。 では、光合成はどのような仕組みなのか。 生物は基本的に高エネルギー電子を持つ分子がなければエネルギーを得られません。一方で、光合成は、図のように、光エネルギーによって低エネルギー電子を高エネルギー状態まで運び上げてしまうんです。なので、他の生物が通常エネルギーの源にできない分子(水、鉄、硫黄、有機物など)さえも利用できます。それをくり返すのが、光合成です。これは生物にとっては、ものすごく大きな「発明」ですよね。 われわれのように光合成をしない生物は、もともと高いエネルギーを持つ分子がなければ、エネルギーを得られません。しかし光合成は、光エネルギーを使うことで、どこにでもある電子を高いエネルギー状態に引き上げて、それを転がすことができる。生物にとっては、ものすごく大きな「発明」ですよね。
酸素発生型と酸素非発生型の光合成の違いは?
──酸素発生型と酸素非発生型の光合成は、どこが違うのですか? 電子源が違うだけです。 酸素発生型は水、非発生型は水以外の分子から電子を引き剥がして、光を使ってエネルギー状態を上げている。酸素非発生型の中には、下に落として低エネルギー状態になった電子をまた光エネルギーで上げて下に転がす……ということをくり返している生物もいます。ただグルグル回しているだけですが、あいだに酵素を挟むことで必要なエネルギーを生産できているので、光のみでエネルギーを確保できてしまうんです。 これは、揚水発電とまったく同じ仕組みなんですよ。日中にソーラーパネルで集めた光エネルギー使って水を持ち上げて、夜のあいだにその水を流して発電する。工学者たちが揚水発電を発明してくれたことで、光合成の説明がしやすくなりました(笑)。