光合成を行う生物はいつ誕生したのか?地球生命史年表が書き変わる大発見に迫る!
24億年より前に酸化した鉄がある理由は?
ちなみに、光合成は必ず酸素をつくるわけではありません。酸素を発生する光合成と、酸素を発生しない光合成の2種類があるんですね。そのどちらが先に生まれたのかも大きな謎なのですが、それを知るうえで重要な手がかりになるのが、37億年前から24億年前までの地層に見られる「縞状鉄鉱」です。 鉄とシリカをベースとした層が縞を描くように交互にできているんですが、その縞状鉄鉱の中にあるのが「酸化された鉄」なんですよ。これは、地質学者から見るとすごく奇妙なことでした。 ──酸素のない時代にできたものですからね。 はい。酸素が鉄と無機的に反応して、酸化した鉄ができるわけです。現存する生物の中には鉄を酸化する能力を持つものがありますが、その大半は酸素を必要としているんですね。いずれにしても、37億年前~24億年前の地層に酸化した鉄があるのはおかしいわけです。
酸素を使わずに鉄を酸化する微生物が!
しかし数十年前に、酸素を使わずに鉄を酸化する微生物が見つかりました。光のエネルギーを使って、鉄を酸化する能力を持っているんです。 この微生物は、光合成をするけれど、酸素は発生しない。37億年前の地球にこのタイプの微生物がいたとすれば、酸素のない時代に縞状鉄鉱がつくられたことも説明ができます。 もしそうだとすると、まず先に「酸素を発生しない光合成」が37億年前から存在していて、24億年前に「酸素を発生する光合成」が進化したように見えますよね? でも、それを裏づける証拠はありません。地質学の世界でも、「縞状鉄鉱の鉄を酸化させたのが本当に生物なのかどうかは疑わしい」という議論がありました。 その議論に決着をつけるには、地質学的な情報だけでなく、生物の遺伝子の情報、つまり分子情報による裏付けが必要です。それが得られれば、冥王代から原生代の始まりまで約20億年ぐらいの地球の歴史がわかるでしょう。
シアノバクテリアが大気を酸素に変えたのか?
──一般的には、シアノバクテリア(藍藻)の出現によって地球の酸素濃度が一気に高まったといわれていますが。 たしかにシアノバクテリアの大繁殖によって酸素濃度が高まったと思われますが、それが酸素を発生する光合成の始まりかどうかわかっていませんでした。別の微生物が酸素を発生する光合成を初めて開発し、それを受け継いだのがシアノバクテリアなのかもしれませんよね。 それ以前の問題として、酸素発生型の光合成と酸素非発生型の光合成のどちらが先に生まれたのかもわからない。今回の研究では、それらの問いに答えを出すことができました。 ──それはすごい! ……で、どんな結論が出たのですか? それを理解するには、いろいろな背景を知る必要があるので、ちょっとお待ちください(笑)。やや遠回りにはなりますが、まずは、われわれ生物が生きるためのエネルギーを獲得する仕組みについて説明しましょう。光合成は、そのために生物が編み出した方法のひとつですからね。