電気アクセサリー取り付けの必須作業。配線分岐のスマートテクニック
「行って来い」でかしめれば端子抜け防止に効果がある
電源を取り出すサブハーネスを自作する場合、2本の配線を並べて片側の芯線をより合わせてギボシ端子をかしめ、もう一方の端部は2本それぞれにギボシ端子を取り付けてY字状にします。 ここではギボシ端子を使用したサブハーネスの製作を紹介していますが、ギボシ端子を使用する際は電気の流れを意識することが重要です。バッテリーからスイッチに電流が流れている配線にサブハーネスを割り込ませる場合、電気の上流であるバッテリープラス側のギボシは必ずメスを使用しているはずです。 ギボシにはオス/メス両方に絶縁スリーブが取り付けられていますが、メス端子の絶縁スリーブは端子金具全体をカバーしています。一方オス端子の絶縁スリーブはカシメ部分だけで、金具の先端は露出しています。 端子が接続されている状態では、オス端子金具の露出部分はメス端子の絶縁スリーブ内に収まっているため、フレームやエンジンなどの金属部分に接触しても問題はありません。しかしもし端子接続部分のプラス側にオス端子を使用した場合、何かの拍子にギボシが抜けてオス端子の金具部分が車体金属部分に接触するとショート状態となり大変危険です。 セオリー通りプラス側にメス端子を使用していれば、ギボシが抜けても絶縁スリーブの働きによってショートは発生せず、オス端子には電流が流れていないので問題ありません。 この法則に従えば、サブハーネスのバッテリーに近い入り口側はオス端子となり、スイッチやアクセサリーはメス端子となります。 1本の配線を2本に分岐する際、ギボシ端子のカシメ部分で2本の配線を同時にかしめたいと考えるのは誰しも同じでしょう。しかしこの作業には注意が必要です。 通常、1本の配線をかしめる際は、カシメの金具部分が被覆に食い込んで抜けを防止します。しかし2本の配線を並べて電工ペンチでかしめると、金具の爪が被覆を巻き込むだけで食い込みません。そのため、配線を強く引っぱると爪をすり抜けてしまうことがあるのです。しかしせっかくY字状に分岐させるなら、すっきりとギボシ部分から2本並列に分岐させたい。 そんな時にヒントになるかもしれないのが、分岐に使用する配線の被覆を剥がしたら、芯線を切断せずにギボシ端子でかしめるやり方です。ワイヤーストリッパーの中には、配線の先端部分だけでなく中間部分の被覆を剥がせるものもあることは以前の記事でも紹介しましたが、Y字分岐の根元部分の被覆を剥がしたら芯線をU字に折り曲げて、ループ部分を跨ぐように端子の爪でかしめるのです。 こうすることで、被覆部分のかしめが抜けるようなことがあっても、芯線のU字部分が爪に掛かって外れないことが期待できます。もちろんこれも、引く力が強く芯線が切断すれば抜けてしまうので、絶対安全というわけではありません。しかしながら、Uターン部分があることで2本の配線の芯線が切りっぱなしで並ぶより、耐久性では有利だと考えられます。 このように電気系アクセサリー取り付け時の電源確保において、サブハーネスの製作はとても有効です。ギボシ端子をかしめる際は、Y字分岐の根元の処理に注意して作業を進めましょう。 【POINT】 ▶ポイント1・アクセサリー取り付け時の電源確保には、エレクトロタップやスプライスの他にサブハーネスを使用する方法もある ▶ポイント2・純正配線のギボシ接続部にサブハーネスを割り込ませることで、車体側配線に加工することなく電源が取り出せる ▶ポイント3・サブハーネスを自作する際は電気の流れる向きや極性を考慮してギボシ端子を選択する
栗田晃