ここもあそこも日本専用! スズキ入魂の新型SUV「フロンクス」に見る“こだわり”と“狙い”
気合が入りまくっている
東京・日本橋で催された「スズキ・フロンクス」の発表会で、記者は大いに戸惑っていた。いや厳密には、スズキが同車の日本導入を発表して以来、ずーっと戸惑っていたのだ。いまだかつて、ここまで告知・発表に気合が入ったスズキ車があっただろうか? いや、ない! 登録車はもちろん、国内販売の8割を占める軽自動車のモデルを見ても、ない! 【写真】スズキ・フロンクスの外装・内装を詳しくチェックする(60枚) 読者諸氏にも振り返っていただきたい。フロンクスの日本導入が発表されたのは2024年7月のこと。合わせてティザーサイトが立ち上がり、報道関係者向けのプロトタイプ試乗会&取材会が実施され、全国の実に537カ所(!)で先行展示会が催されたのだ。鈴木俊宏社長のプレゼンテーションによると、スズキがこうしてリアルな場で新車を発表するのも、実に5年ぶりのことだとか。会場の方々で「軽のときより断然スゴくない?」「スズキってこんなにティザーに前のめりだったっけ?」「ここまで力が入っているのは、取材していて初めてかも」なんて言葉が聞かれたのも、さもありなん。 それにしても、なんだってスズキは、フロンクスの日本導入にこんなに力が入っているのか? ここで「しばらく新車の投入がなかったからでしょ?」とかシタリ顔で語る人は、にわかのスズキオタクである。ケチ……じゃなくて節約家のスズキのこと、広告の予算が余ったんなら喜んで来季に繰り越すか、ほかの事業につぎ込むことだろう。浜松の雄を甘く見るな(笑)。 では記者の見解はどうかというと、フロンクスというクルマの出来に、相当に強い手応えを感じたからではないかと思う。なにせ生産国のインドでは、史上最速で累計販売20万台を達成した車種となり(発売から1年半)、そのインドと南アフリカでは、複数の自動車賞も獲得。2024年の「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」でも、アーバンカー部門でファイナリストに選出されたという。クルマの出来とその反響に、スズキも「これは、イケる」と机下でこぶしを握ったに違いない。 加えて日本では、2024年4月に「イグニス」「エスクード」が相次いでお役御免となっている。花のコンパクトSUV市場で、スズキは今、背水の陣なのだ。愚鈍な記者でさえ、フロンクスに寄せる彼らの期待、手応え、覚悟を感じたのも、そりゃ無理からぬことだろう。