腰椎椎間板ヘルニアを放置するとどうなる? 排尿・排便障害にならないためには
腰椎椎間板ヘルニアの治療法は?
編集部: 腰椎椎間板ヘルニアの治療にはどんなものがありますか? 石井先生: 飛び出した髄核は異物と認識され、免疫系の細胞によって次第に縮小することがあるため、初めは手術以外の方法である保存療法で経過観察します。具体的には薬物療法や装具療法、ブロック注射、物理療法や運動療法などのリハビリテーションが多く用いられています。 さらに生活指導・環境調整などもおこなって症状の軽減を図ります。なお「ベッドマットは高反発(硬め)」を推奨します。 編集部: それでも改善しない場合はどのように治療するのですか? 石井先生: 保存療法で改善しない場合や重度の神経障害を伴う場合、または生活に著しく影響が出ているケースには、手術治療が選択肢となります。 とくに下肢の運動麻痺や排尿・排便障害が急激に進む場合などは、放置していると症状の回復が見込めなくなるため、早急に手術をおこなうことが必要です。 編集部: どんな手術法がありますか? 石井先生: 20年ほど前は、全身麻酔で皮膚を大きく切開するような手術が主流でしたが、現在は負担の少ない局所麻酔下での低侵襲の手術が多く取り入れられています。 例えば全内視鏡下椎間板切除術(FESS)や内視鏡下椎間板摘出術(MED)、顕微鏡下椎間板ヘルニア摘出術などがその例で、FESSは約7mmの切開、MEDは約2cmの切開かつ、手術時間が約1時間と短いため、基本的に日帰り(外来)でおこなえます。 さらに、現在最も体の負担が少ない新しい手術法として経仙骨的脊柱管形成術(TSCP)があり、こちらの切開は約3~4mmです。 編集部: 最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。 石井先生: 腰椎椎間板ヘルニアは、一般に腰痛あるいは神経痛を来たします。先述のベッドマットなどの日常生活上の環境調整や内服加療などで、症状が自然に軽減する場合もあります。一方、時に進行性の運動神経麻痺や排尿障害なども起こします。 症状が継続的あるいは進行性の場合は、専門医を受診することをお勧めします。以前とは違い、日帰りでできる負担の少ない手術がありますので、どういった治療法がよいのか、専門医と相談しながら決めましょう。