ポジティブな会話を実現する方法を行動科学研究者が指南 カギは「ワニ脳・サル脳・ヒト脳」をどう使うか「さんざん文句を言う人が相手でもまずは話を聞こう」
私たちの脳は、生物進化の歴史を映し出す3層構造をしている。最も基礎となる部分は生存本能を司り、爬虫類と同じような機能を持つことから「ワニ脳」と呼ばれる。その上には感情を扱う「サル脳」、さらには人類特有の論理的思考を可能にする「ヒト脳」が重なっている。 【写真】”目力の強い”スウェーデンの研究者・レーナ・スコーグホルムさん
人との出会いや会話の場面で、この3層は瞬時に反応し、相手との関係性の方向性を決めていく。その決定的な瞬間が、まさに最初の出会いの時なのだ。 ワニ脳を活性化させずに、トゲなく人を動かす他者と生きる術に迫った『あいては人か 話が通じないときワニかもしれません』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。
教えてくれた人:レーナ・スコーグホルム(Lena Skogholm)さん
行動科学の研究者。講演家、教育者。年に80回近く講演や講義を行い、スウェーデンで最も人気のある講師100人の1人に選ばれた。温かさとユーモアにあふれる語り口と、明快でわかりやすい解説には定評があり、2021年には、スウェーデンのすぐれた講演者に与えられるStora Talarpriset賞を受賞した。25年にわたり研究を続ける脳科学にもとづいた人づきあいのメソッドは、職場や私生活で今すぐ役立つツールとして、高く評価されている。本書『The Connection Code』(Bemötandekoden:konsten att förstå sig på människor och få ett bättre liv.)は、スウェーデンで発売と同時に売上ランキング上位に入り、ベストセラーとなった。国内外で話題の本となっている。 * * *
会話は「はじめ方」に大きく影響される
音楽のニュアンスが出だしのフレーズで決まるように、最初に相手の心をつかめれば、そのあとのメッセージもポジティブに受け取ってもらえる。また、基本となる適切なトーンで会話をすれば、その交流は好ましいものになる。 あなたは、会話をどんなトーンにしたいだろうか? あなたが最初にトーンのスイッチを入れよう。非言語のコミュニケーションを思い出してほしい。これは伝染力がとても強い。 その交流がどうなるかは、どんなトーンのスイッチが入るかで決まる。よいスタートを切るには、度を越えない程度のポジティブな言葉を選ぶことが大切だ。妙になれなれしい言い方をすると、相手はかえって警戒してしまう。 会話の出だしにどんなトーンのスイッチが入るかは、自分がその状況をどうとらえているかや、そのときの心の状態にも影響される。 たとえば、あなたが時間ぎりぎりに息を切らしながら会議室に飛び込んだとしよう。間違いなく、あなたが感じているストレスは、ほかの出席者に伝染する。 では、その会議に出るのが不安でびくびくしていたら? その気持ちも、やはり伝染する。こんなときは、3~5回深呼吸をしてみよう。そうすれば脈拍数が減って、身体が自然に落ち着いてくる。 相手が腹を立てているなど厄介な状況なら、3つの脳(ワニ脳、サル脳、ヒト脳)が求めるものを満たすにはどうすればいいかを考えよう。状況をコントロールできるとわかれば、ストレスも減るからだ。 また、論理的にものを考えることにも、気持ちを鎮める効果がある。たとえば、「相手の態度に応じてワニ語とサル語を使おう」と自分に言い聞かせる。その状況を筋道立てて考えれば、冷静になれる。 会話の方向は、あなた次第だ。あなたが発するあらゆる言葉が、方向を決める──ポジティブな方向にも、ネガティブな方向にも、その中間にも。 ポジティブなスタートを切ると、たいていはポジティブな結果になる。逆に、ネガティブなスタートを切ると、会話は苦戦を強いられるだろう。 日常的な会話や会議などで、あなたはどんなスタートを切りたいだろうか? ポジティブなスタートを切るには、最初の発言や態度がきわめて重要だ。自分からどんなシグナルが送られるか、自分のふるまいがどう受け取られるかを意識しよう。