ホンダ社長が語る「2040年脱エンジン」の行程表、「ならでは」の魅力的なBEVを実現できるか
技術進化もあり、またe-フューエルの開発などもあるので、エンジンを完全にやめるのではなく1部隊は残す。研究はやめず、何かあった時にまた作れるような態勢にはしておくという。e-フューエルについて、かつては全否定といった感のあった三部社長だが、e-フューエルを推進している自工会の副会長という立場もあってか、かつてよりは柔軟に考えてはいるようだ。 「e-フューエル専用のエンジンを積むスポーツカーを作るとかね、あるかもしれないですけどね」(三部)
しかしながらメインのシナリオにエンジンを置くのは、もはや難しい 2030年には販売の40%、200万台がBEVになるとして、内燃エンジンを積むクルマは300万台。2035年にはBEVが80%ということは、トータルの台数が同じだとしたら内燃エンジン車は100万台である。しかも、10年後の話なのだ。投資をためらうのもよくわかる。 ■脱エンジンには自信 「やっぱりわれわれの次の勝ち技を作っていかないと。いつまでもエンジンだけにしがみついても負けますよ。かつてわれわれはエンジンでメシを食っていました。私自身、熱効率50%なんてエンジンも実は手掛けていましたが、それ以上は難しい。また、いくらいいエンジンができてもCO₂を出すことは間違いありません。パワーユニットを武器にしたいというのは変わっていませんが、それはちゃんと時代に合ったものでなければ。そう考えるとエンジンはやめた方がいいんだろうなということです。これは結構、自信ありますよ」(三部)
賛成、反対、色々意見はあるだろう。しかしながら、こうして話を聞いて、かつてのホンダらしい独立心、先取の気風が改めて強く出てきたなと感じられたのは事実である。そんな感想に三部社長は「元々そういう会社なんで」と笑った。なるほど、確かに。 他に迎合せず、我が道を行く。電動化に向けた大変革は、ホンダが本来あるべき姿を取り戻すためのいい機会になるかもしれない。
島下 泰久 :モータージャーナリスト