不貞の「相手方」への慰謝料請求「唯一の法的制裁」「慰謝料の対象とすべきでない」〈弁護士アンケート・全コメント紹介〉
パートナーの不倫相手に対する慰謝料請求は、本当にその人のためになっているのか。弁護士ドットコムでは「不貞の慰謝料請求」に関して、会員弁護士にアンケートで考えを聞いた。 相手方に対する慰謝料請求に関する考えについて、弁護士280人が回答した。相手方への損害賠償請求を「認めるべき」とした弁護士は177人(63.2%)、「認めるべきでない」としたのは58人(20.7%)だった。 不貞の相手方に対する損害賠償請求が、依頼人にとって「利益となっている」としたのは158人(56.4%)、「利益になっていない」としたのは28人(10%)となった。 今回の設問に関する回答を任意で求めた。フリーコメントを紹介していく。
●アンケート概要
アンケート調査は2024年12月1日~9日に実施して、弁護士280人(男性223人/女性57人)が回答した。 280人のうち、不貞行為の「相手方」に対して、請求者側として慰謝料請求事案を扱った経験のある弁護士は230人だった。
●不貞の相手方に対する損害賠償請求を認めるべきか
不貞の相手方に対する慰謝料請求を認めるべきかを回答者全員に聞いた。 「認めるべき」 177人(63.2%) 「認めるべきでない」 58人(20.7%) 「どちらとも言えない」 45人(16.1%) そのうち、任意のフリーコメントを全て紹介する 【認めるべき】 ・既婚者と分かった上であえて交際している場合が多いので ・不法行為者であることは変わりがないから ・弁護士の仕事が増える ・共同不法行為である以上法的には当然 ・不貞は相手がいてこそ、整理するものであるから ・共同不法行為である以上、当然 ・相手方の行為が不法行為の葉面を充たす場合は慰謝料請求を認めて支障ない ・不法行為性は明らかであるため ・依頼者の要求が強い ・夫婦の問題として処理するべきだという見解もあるが、相手方が何事もなく平和に生活することは許されないと思う ・婚姻関係の継続を希望する妻が夫の不貞行為の相手方を追い払うための方法としては慰謝料請求をする以外に良い方法がないことがある ・現在の実務だし、相手にも責任があるから ・共同不法行為を構成するから ・結婚制度があるため ・婚姻状態を分かっていながら不貞行為を行うことは婚姻状況の崩壊をもたらすものであるから ・不貞に及んだ配偶者自身の責任は勿論だが、相手がいなければ不貞はできないし、不貞であることを認識していたのであれば責任を認めることはやむを得ない ・故意がある以上、悪質な面があることは否定出来ず、何もなしで野放しでいいとは思えない ・不貞の相手方にも十分な落ち度がある場合が多い ・共同不法行為であるため、またパートナーに請求をしても、財布は請求権者と同じことが多く、実質的には賠償とならないため ・実務は妥当 ・婚姻関係の破壊又は離婚による権利侵害があるから ・配偶者への請求はさておき、相手方は許せないという考えは少なくないから ・仕事の機会が増える ・婚姻関係を法律上保護する以上、その破綻の原因となりうる不貞行為について、共同不法行為が成立するのは当然だと思う ・原告に精神的苦痛を与えた点で不法行為の要件を満たしますし、その首謀者であることも多いため、認めない理由はないと考えます ・著名人の不倫が批判されているのを見ればわかるとおり、社会的に不貞行為が許容されているとは言えない ・精神的苦痛を生じさせるようなことは十分している。政策的にも不貞相手に慰謝料請求を認めないと不貞が横行しかねない ・婚姻の貞操義務があるし精神的に傷つくから ・不貞行為がなされた場合、離婚に至る可能性が高いし、至らなくても婚姻関係に与える影響は通常甚大です。であればそれに対する被害回復は必要でしょう。また、「恋愛の自由」は理由にならないと思います(であれば配偶者間の不貞慰謝料や離婚原因にもならないとしないと筋が通りません) ・落とし前の手段の一つとしてお金を請求することは差し支えない ・不貞をされた側の依頼者の納得感のため ・不貞の相手方のみに請求をしたいと考える方も一定程度おり、全く認めないのが妥当とは思えない ・不貞相手の配偶者にとっては、不法行為にほかならないから ・日本の伝統して価値観と馴染む ・法益侵害をしているため ・共同不法行為だから ・帰責性の程度によるものの、不法行為を構成する態様で不貞に加担していたのであれば、責任は問われるべき ・不貞と分かって行為に及んでいるから ・不貞が原因で精神的苦痛を受けたのである以上は認めるべきでないという意見の理由がわからない ・道義的に非難されるべき ・請求する側は、配偶者に対する怒りより不貞相手に対する怒りの方が強いことが多いため、損害賠償請求を認めてその気持ちを少しでも抑えられるため ・不貞行為の相手方も、当該夫婦の関係性の破綻には寄与しているので、不法行為は肯定されるべきだと思います ・このアンケートで、不貞相手に対する慰謝料請求権を否定する学説があったり、国があることを知りました。現状は不貞相手に対する慰謝料を認めてもらっている案件が全てといえ、これが否定されると、(そう単純ではないが)不貞行為が増える方向になるのではないかと思います ・どんな時でも必ず認めるべきという意見ではなく、それ相応の違法性がある場合は認めるべきとの意見です ・(既婚者と知っていたのであれば)不法行為でない理由が無いから ・婚姻破綻の責任がある以上、認めるべきである ・相手方が既婚者だと知り、行為に及ぶなら、その責任を負うべきだと思う ・不法行為を構成するという考えは妥当であるし、不貞行為を抑制するためには必要だから ・請求者の気持ちとしては、配偶者よりも、不貞相手に対して制裁を求めているから ・不法行為の連帯債務者となるから ・精神的苦痛は生じていると考えられる ・他人の性的独占権を侵害しているから ・不貞行為の相手方も権利を侵害したことには間違いなく、配偶者だけを責めるのは不当である ・共同不法行為である ・不貞と認識していたのであれば、不法行為を構成するから ・不貞行為の抑止のため ・家庭を破壊した責任は大きい ・不法行為にあたるから、また請求を希望される方が多いから ・不貞行為は配偶者だけでは行えないものであり、不法行為として認めることに何ら問題がないから ・消極的な理由。認めないと私刑が横行して社会が大変なことになる ・相手が既婚者であることの認識があれば、家庭の平穏を侵害する行為であることの認識があるといえ、違法性が認められるため ・不貞相手にも連帯責任がある ・現在の日本においては,相手方にも一定の責任があるというのが社会的な共通認識であると思う ・自分の相手が家庭を持っているを知っているから ・契約論としては、不貞をした配偶者のみが慰謝料を負担すべきであろうが、社会制度として婚姻制度を維持するならば、婚姻関係の破綻に関与した者に一定のペナルティが必要と考える ・他国の法制はともかく、我が国では通説・判例で認められているから ・相手に精神的苦痛を被らせているのだから当然。否定する理由が存在しない ・不貞をされた側は、本来不必要なことで日々精神的にも身体的にも負担を負うことになる。夫婦が婚姻関係にある以上、当然に認めるべきである ・婚姻関係に対する権利侵害があるだろうから ・共同不法行為者だから。パートナーに必ずしも資力がないから ・不貞であることを理解している相手方であることを前提として、一般論として、不貞の事実により夫婦関係が著しく悪くなるのが通常であることを考慮すれば、その不貞の一端を担った相手も当然責任を負うべきであるため ・認めない理由がよくわからない。共同不法行為者に該当する ・基本的には共同不法行為だから。不貞行為の認識がないなど、個別事情に照らして免責すれば足りると考える ・家庭を破壊する者は共同不法行為者であるから ・不貞を行い、それに関与した共同不法行為者にあたるのであれば、当然損害賠償義務を負う ・設問の趣旨が分からない。確実な証拠がなくとも、本人が疑わしいと確信しており、なおかつ賠償を請求したいと感じている以上は、損害は認められ得るため、請求じたいには何らの支障はない ・認めることで不法行為の抑制になるため ・設問のいう「損害賠償請求」が何を指しているかが、一義的に明確でないが、不貞をしたことを理由とする不貞行為に基づく慰謝料請求のことを指しているのであれば、他人の権利又は法律上保護される利益を侵害している以上、認められるべきだから ・共同責任 ・民法上違法であることには変わりないので ・加害行為自体は法的に観念できるため ・不法行為を行ったといえるから ・共同不法行為に該当する為 ・離婚ないし夫婦関係の平穏の保護 ・婚姻関係、家族関係に関するモラルハザードが起きると思う ・婚姻制度の保護 ・被害者側の感情からすれば当然と思う 【認めるべきでない】 ・害意があるなどの特殊事情がない限り、未婚者にとっては自由恋愛の範疇であると考えるため ・認める理論的根拠がない 資力が低い場合が多い。求償権行使も弁護士費用等からすると難しい場合がある ・貞操義務は専ら不貞をした配偶者が負うものである。他方で、性的関係を誰と結ぶかは個人の自由であり、それゆえに不貞相手が損害賠償義務を負うのはおかしいと考えられるため ・不貞の責任、違法性は配偶者についてのみ問題になるのが論理的かつ合理的であり、学説を見てもそのことは明らかだから ・性的自由を尊重すべきなので認めるべきでないという意見が傾聴に値すると思っているが、婚姻という契約の効果としては損害賠償請求は維持すべき ・あくまで夫婦間の問題であるべき ・婚姻破綻しないことが多く問題性が低い ・不貞をする夫、妻が悪いに尽きる ・債権侵害だから ・否定説の理由で挙げられるように、悪いのはあくまで配偶者であり配偶者に責任を取らせれば良い。取らせれば良い。あくまで配偶者の債務不履行であり、第三者の債権侵害が不法行為となるのは例外的な場合に限られるはずである ・夫婦関係を積極的に破壊する意図がないなら必要ない ・婚姻相手は、自分のものではないため ・個人の行動の自由だから ・離婚慰謝料との関係性について問題がある。不定相手の慰謝料支払いは本来的には離婚慰謝料の減額要素になることが大半だが、離婚訴訟の中で当該事実が明らかになるとは限らず、慰謝料であるにも関わらず二重取りが成立する余地が多分にある ・結婚の当事者ではない人が、他人の結婚に対して責任があるのはおかしいと考えるから ・不貞の相手方が慰謝することに違和感がある ・不貞配偶者に一義的な責任があるから ・積極的債権侵害の場合以上に保護を与える必要性が乏しい。 ・恋愛の相手方が未婚か既婚かで違法性に違いが出るのはおかしい。そこは自由恋愛が原則と思う ・パートナーの責任のみ問うべき。実際にパートナーを慰謝料を支払っているケースがほとんどである ・夫婦間の貞操権は物件的権利ではないと考えるため ・恋愛は本来自由であり、責任を持つべきは配偶者であると思います ・金で解決すべき問題ではない。理論的にも被侵害利益が妻(夫)に対する何であるのか不明 ・不貞の相手方には貞操義務がない ・あほらしいから ・婚姻外の第三者は、自由恋愛の当事者に過ぎない。特に著名人の場合、社会的非難が過剰である ・実情を見れば不貞の相手方自身も被害者であるケースも多い ・恋愛は自由競争だから。結婚する際には双方の合意がいるのとパラレルに考えると、婚姻中でも、一方に愛情がなくなれば婚姻として保護するべき理由がなくなるから ・配偶者が払えばよい ・貞操義務を負っているのは配偶者なので、配偶者にのみ責任を問えば良い ・不貞は夫婦の問題で第三者に請求すべき問題ではない ・夫婦の問題 ・不貞をはたらいた配偶者の単独責任でしかないから ・英米法では立法で否定されている。イリノイ州には古い婚姻妨害の規定があるがほぼ利用されることはない。中国民法では離婚慰謝料に否定的なため第三者の請求も否定されている。姦通罪に関する韓国憲法裁、台湾大法官会議決定がプライバシーを侵害し違憲としていることも大きい。南アフリカで民事請求を違憲とした判決があると聞いたが、愛情に関することは訴訟に向かない。中国ですら離婚慰謝料に極めて抑制的であり我が国でも離婚後扶養の問題を発展させ、離婚慰謝料も不貞慰謝料も廃止した方が良い。諸外国に比べ原始的だと感じる。また、若い裁判官は認めたがるが高齢の裁判官は認めたがらない感想だ。裁判官の価値判断に基づき過ぎている ・「人を好きになる」という気持ちを縛るべきではない ・本来夫婦間の問題だから ・不貞配偶者の関与が必須で、相手方よりその責任が重い。また、相手方は不貞配偶者にさらに求償を行うこととなり、紛争が長引く ・不倫は慰謝料の対象とするべきではない。法が介入するべき事項とは思えない 【どちらとも言えない】 ・事案ごとに様相が異なるので一概に言えない ・基本的には認めるべきではないと考えますが、第三者の認識や態様によっては悪質性が高い場合も考えられ、この場合には認められても良いと考えています ・一次的に責任を負うべきは相手方ではなく、不貞をした配偶者であるから。また、求償関係をどう解決するかの問題も考えなければならないから ・個々の事案の事情によって異なるから ・不貞の責任は本来配偶者にあると思われるが、不貞の相手方が不貞の発覚後も不貞を続けるような場合は不貞の相手方にも責任があると思われるから ・個別性が強いので、一概には論じられない ・どちらが悪いのか一概に言えない ・今の判例では、離婚まで至らせた関係性が問われていて、不貞相手への離婚・不貞慰謝料は認められにくいと感じている ・不貞を働きかけたのが誰かによって結論がかわりうるから ・不貞と分かっているのであれば認めても問題ないとは思う。ただ、そこまでしなくても、という気がする ・個人としては認めなくても良いと思うが、依頼者の請求したいという事情は理解できる ・場合による ・不貞の程度、相手が既婚者であることを知っていたか、加害の意図があったかなどにより、請求を認めるべき場合もあるとは思いますが、基本的には不貞行為を行った配偶者が責任を持つべきと考えているため ・配偶者のみが責任を負うルールとなると、不貞の相手方は不貞による不利益がなくなります。結果として、不貞相手がとっかえひっかえ不貞行為を行うことを助長しかねません ・不貞相手が既婚者と知って肉体関係を結ぶ理由にも色々あるから ・当事者の経済状況にもよるので ・事案ごとに事情は違うので、認めるべきでない場合もあると考える