不貞の「相手方」への慰謝料請求「唯一の法的制裁」「慰謝料の対象とすべきでない」〈弁護士アンケート・全コメント紹介〉
●不貞の相手方に対する慰謝料請求は、「依頼人」にとって真の利益となっているか
不貞の相手方に対する慰謝料請求が、「依頼人」にとって真の利益となっているか回答者全員に聞いた。 「依頼人の利益になっている」 158人(56.4%) 「どちらとも言えない」 94人(33.6%) 「依頼人の利益になっていない」28人(10.0%)
そのうち、任意のフリーコメントによる回答を全て紹介する。 【依頼人の利益になっている】 ・経済的に補填されるから ・夫婦関係の問題の解決にはならないが、精神的損害の慰謝にはなると思われる ・気持ちが少し落ち着いた、と言われるため ・裁判所から不法行為であると認めてもらうことが、気持ちの上での一区切りとなる ・結局は、加害者配偶者との不真正連帯債務であり、不貞相手は、加害者配偶者への求償権を持つから ・不貞による依頼人の憤りの解消として、損害賠償請求という場は適切ではないでしょうか ・離婚後の生活費の足しになるから ・不法行為者に対する金銭的解決が行われているから ・不貞の相手方は、依頼人の法的利益を侵害しているから ・配偶者に資力がないことが多い ・補完的な位置づけと感じる ・家庭の崩壊の原因の一端なので ・特にない ・生活費にする方、遊びに使う方、苦痛の解消方法はひとそれぞれ ・婚姻関係の継続を希望する妻が夫の不貞行為の相手方を追い払うための方法としては慰謝料請求をする以外に良い方法がないことがある ・責任のある相手から賠償が得られれば当然利益になる ・気持ちが発散できる ・不貞行為者にも支払いをさせる動機付けになることもある ・依頼者にとって一区切りになっている ・日本の法律では自力救済や報復が認められていない以上、金銭請求ができて然るべきであるから ・配偶者との婚姻関係を継続しようとする場合は、相手方に請求することにより、不貞の関係が解消される可能性が高い ・配偶者への請求はさておき、相手方は許せないという考えは少なくないから ・原告が責任を負わせたいのは、まさに相手方です ・そう考えない理由が見当たらない ・気持ちの整理になる。金銭回収の一助になっている ・他に手段がないし、裁判の中で気持ちをぶつけることができる ・多少なりとも怒りが和らぐ ・不真正連帯でも、上記のとおり配偶者に請求する意思のない方は一定数いるから ・依頼人には喜んでもらったから ・自力救済ができない日本においては唯一の法的制裁 ・経済的な利益もあるが不貞の相手方に何らかの罰を与えたいという思いも満たすことが多いため(個人的にはこのような相手方を苦しめたいという動機を美しいものとは全く思わないしそのような憎しみを原動力としていると見受けられる者の依頼を受けることは少ないが人間である以上そのような気持ちになること自体は仕方のないことだと考えている) ・損害を受けているのだから当然 ・請求する側の怒りを少しでも抑えられるため ・現に依頼者(不貞行為をされた側)は相手方への責任追及を望んでいるからです ・利益になることもあるという意味です ・請求が認められない、あるいはわずかであって弁護士費用負けすることが明らかなような事案を除き、利益とならない理由がない ・気持ちに区切りができるから ・精神的苦痛は金銭である程度緩和されていると思う ・依頼者本人が精神的に満足するから ・感情に代わるものは金銭請求しかないため ・むしろ依頼人としては不貞の相手方からお金を取りたいという要望がある ・金銭解決が図られることにより、精神的にも踏ん切りがつき、前を向くことができる ・被害感情は軽減される ・不貞をした夫婦に資力がない場合など、相手方からの回収可能性があった方がいいから ・不貞行為をした配偶者が資力がない時に、被害回復ができるから ・抑止力にもなるため ・不貞の相手方に対して大きな怒りを持っている依頼人が多いため ・不貞相手に対する一定の責任追及ができる ・経済的には全く利益になっていないが、気持ちの問題として、それで区切りがついて新しい一歩が踏み出せるならいいのではないかと考える ・慰謝料請求し、解決することでその後の婚姻生活の継続に前向きになれる(離婚しない場合) ・依頼者の方が請求することにこだわっていることだから ・不貞をされた依頼者としては、何もないと納得できないが、慰謝料を獲得できればひとまず気持ちの整理がつく ・不貞の相手方こそが元凶という案件も少なからず存在するため ・依頼者が希望している。とくに婚姻関係を継続する前提の場合、相手方への制裁が不貞関係終了の契機になる ・どのような帰結になるかというところはあれど、一定の気持ちを晴らす場にはなっている印象 ・報復感情が満たされる ・証拠のマスキング処理等でプライバシーは保護できる ・家庭を破壊する者に対する請求は当然である ・実際に被害者の溜飲が下がるところを何度も目撃しているため ・設問の趣旨が分からない。誰かがやらないと、終わらないという類型であり、賠償請求よりも紛争解決の意味合いが大きいと思っている ・回収可能性が高まる ・不貞に悩まされたことの一応の解決にはなるので ・金銭による慰謝と考える ・(元)配偶者に資力がない場合や離婚しない場合など、必要な場合に請求しているので、真の利益となっている。配偶者に資力・支払能力があり、離婚する方向の場合にまで不貞の相手方に対して請求することはあまり意味がないと思う ・法的に認められた権利であり、金銭支払いにより「被害者―加害者」構造が顕在化、明確化するという意味がある ・精神的回復 ・女性からの請求事案が多く、財産分与がほとんどない事案では経済的に新生活をする後押しになる ・金銭的に充足しているのであるから、利益にはなっている ・真の利益などという価値判断は弁護士には不要、金銭的利益があるのが事実だから ・離婚していない場合,配偶者への損害賠償請求することは事実上期待できない ・金銭をもらうことで、いくらかの気持ちの収まりは得ることができる ・支払を要求する相手が増えるのだから請求者の利益になっていることは明らか ・気晴らしにはなる ・形がつくことによって気持ちの納まりがつく 【どちらとも言えない】 ・ケースバイケースと考えます ・求償関係の問題があるから ・結局、感情的なしこりが残るから ・いくらかは仕返しをした、という気がしてすっきりしているように思われる。ただ、依頼終了後しばらくしてから、むなしくなるのではないか ・不貞の相手方に対する攻撃的な感情は激しいので、慰謝料請求ができないとしてしまうと、自力救済に走りかねない。ただ、訴訟において認められる金額は依頼者にとって満足できるわけでもないので、何とも言えない ・不貞相手への慰謝料請求はしたことがないため ・恨みを晴らすという意図にしろ、本当に損害填補の意図にしろ、そのわずかな認容額では、さほどの意味がないことが多い ・不貞の一方当事者である配偶者が相手方に代わって立て替えることがある。その場合、お金が移動しているだけであり、また離婚に至らなくてもギクシャクすることが多い ・気持ちの区切りをつけるために必要な場合もあるが、金額的には満足いかないことも多い ・本質的にお金で解決できる問題ではないので ・美人局みたいな案件はある ・依頼人のニーズによるから ・経済的なメリットはないと思う。一種のケジメとして心理的な意味はあると思う ・場合によるから ・安すぎるから ・請求する側からすれば、納得や満足の一要素にはなっていると思います ・事案にもよりますが、原則、配偶者側の過失割合の方が大きく、離婚していない場合、家計に残る金額は小さいか弁護士費用で赤字になる場合が多く、その一方で請求者側の心身の負担が大きい為 ・相手方が依頼人と同一生計であれば、結局、依頼人と相手方の共有財産からの支払いになるので、依頼人にとって真の利益になっているとは言い難い事態が生じることがある ・不貞を行った配偶者との連帯責任であるから、配偶者と離婚していなければ実質夫婦財産より支払われるから ・不貞の事実の詳細な立証は依頼人の心理的負担が大きい場合がある ・結局金銭換算せざるを得ないが、それによって依頼者の精神的損害が必ずしも癒える訳ではない。しかし、他方で、生活する上で金銭は必ず役に立つから ・怒りという負の感情を継続させることで、本人の生活品質が下げられているような印象がある。また、その怒りのため、本筋である離婚の解決が遠のいているという側面がある事件もある ・認容額が低く費用を差し引くとほとんど手元に残らないため ・「真の利益」の定義をもう少し具体化してもらい、質問の問題意識を示してもらえると、もう少し答え易くなると思う。気持ちを晴らすという意味では、一定程度利益になっていると考える ・法的に請求できるのは金銭のみなので、それしか方法がない。それが真に利益かどうかは何ともいえない ・不貞された側は、不貞相手から慰謝料を取れた、という結果を元に不貞トラブルの解決を得た、として自分を納得させているようだが、本心の納得とは言い難いように見えるため ・家庭が崩壊しており、真の満足は得られない ・依頼人の許せない気持ちはある程度和らぐかもしれないけど、事件に苛まれる時間は大きくなる ・金銭は得られても、金銭で慰謝されているのか分からない ・依頼者が主観的に気が晴れることはあるだろうから、一概に利益でないとは言い難い ・感情的なってしまい生活が破綻しては本末転倒である ・真の利益が何かわかりません。裁判所が認める以上は請求します ・単なる感情的な報復に過ぎない ・調査会社の費用も高く慰謝料相場は低いし、相手の弁明を聞くのも辛い ・不貞相手の支払いを不貞配偶者が肩代わりすることが多いから ・腹いせ・憂さ晴らし程度という利益にしかなっていないと思うから ・気持ちの問題のことが多いと感じるため ・気持ちの持って行き場ができると思うが、法的に保護すべき利益と言えるか微妙 ・お金が入るのはいいだろうが、精神が貧しくなる ・示談成立の場合は、コスパ良く気持ち的に満足も得られるが、離婚に至っていない場合に裁判で争われると費用倒れになる ・取れればもちろん利益だが、立証や支払能力の問題で取れないことも多く、その場合余計苦しむ ・お金にはなるけど労力と感情の無駄だとは思う 【依頼人の利益になっていない】 ・金銭以外での解決を求める依頼者も多くいると思われるため ・判決に勝訴しても支払われないこともある、長期化して解決しても意味がない ・いつまでも被害感を引きずるので ・親権を取られる男性の心の痛みは慰謝料では埋められない。(さりとて、不貞行為と親権を直結させるべきではないのもそのとおり。もう少し考慮されてもいいのでは、と思うこともあるが…。) ・金銭のみでは慰藉されない ・結局、原資は配偶者から出ることになるため ・夫婦の愛情の問題を相手方に金銭請求しても解決にならない ・不貞を問題視するならそれは配偶者との関係性が問題であり、配偶者を相手にすべきと考えるから ・美人局的感覚の人が多いから ・離婚に至らない場合、費用倒れもある ・どうせ満足しないから ・金で解決できない。相手方に資力のない場合不満だけが残る ・不貞の相手方に対して慰謝料を認めたところで、夫婦間の愛情がより良く保持されるわけではない ・依頼者が慰謝料に固執するものの、実際の離婚後の生活維持のためには、金銭的には不十分である。慰謝料以外の生活保持の方法を考えるべき ・いくら慰謝料を獲得したとしても、相場の金額では満足はできないし、不貞の相手方への憎しみは消えないから ・自身の配偶者に対しての責任追及の機会を減じるから ・冷静な人2割、冷静さを欠いた人8割という感想。悔しいことは分かったが、有責配偶者からの離婚請求や夫婦財産契約の無効主張以外不貞の立証は止めた方が良い ・慰謝料額そのものが低く、「利益」としては「裁判を起こして溜飲を下げる」にとどまると思われ、そのために訴訟すべきではない