なぜ横浜DeNAは9回7得点の猛攻撃でカープ栗林を引っ張り出すことに成功したのか?「誰一人あきらめず最後まで戦った」
横浜DeNA対広島戦(19日、東京ドーム)は両チーム合わせて6本塁打、30安打が飛び交う乱打戦となったが、広島が12-11で辛くも逃げ切った。横浜DeNAは先発のマイケル・ピープルズ(29)が3回に突然倒れて緊急降板するアクシデントがあり、9回まで8点差をつけられていた。それでも9回に宮崎敏郎(32)の6号満塁弾などで一気に7点を奪い1点差に詰め寄り、横浜スタジアムが東京五輪の会場となる関係で、仮住まいとなった東京ドームに駆け付けたベイファンを沸かせた。
宮崎が6号満塁弾
まるで映画「ロッキー」を見ているようだった。 サンドバッグ同然にパンチを浴び、顔が腫れ、ノックアウト寸前だったが、最終ラウンドのゴングが鳴るまであきらめない。4-12の8点差で迎えた9回。それは一死から途中出場の柴田が一塁・堂林のエラーを誘って出塁したところから始まった。柴田はこの日、埼玉の戸田で予定されていたファームのヤクルト戦が雨天中止になったことで緊急昇格したばかりである。マウンドには広島3番手の高橋樹也。花巻東高出身で大谷翔平とは入れ違いの3学年下。プロ6年目の左腕で6月に入って6試合連続で無失点投球を続けていた。 桑原が四球で歩き、細川の三遊間を襲う内野安打で満塁にすると二死からオースティンが押し出し四球を選び、まず1点。そして宮崎が無人のレフトスタンドにグランドスラムを叩き込んだ。これで3点差。さらにソトがセンター前ヒットで出塁したところで、佐々岡監督がベンチを出て、登板予定のなかったクローザー栗林の名を告げた。準備不足だったのか、それとも26試合登板の疲労が原因だったのか。ストレートがバラつき、伝家の宝刀のフォークが落ちない。 ひと握りバットを短く持った代打・楠本が141キロしか表示されなかったアウトコース高めのストレートを逆らわずコンパクトに叩いた。レフトフェンス直撃のタイムリー二塁打。13日のオリックス戦で22試合続いていた連続無失点記録がストップした栗林がまた失点である。2点差。打者一巡で、この回、2度目の打席に立った得点圏打率.486を誇る大和が、落差のないフォークを狙い打ちして三遊間を破る。栗林は6球連続でフォークを投じていた。ついに1点差である。 ベンチは沸き、場内は騒然。だが、柴田はカーブを打たされて一塁ゴロ。1点が届かずゲームセットとなったが、仮住まいの東京ドームの一塁側に陣取ったベイファンからの拍手が鳴りやまない。感動のスタンディングオベーションである。 「誰一人あきらめずに最後まで戦った。(ベンチも)盛り上がり、勢いにみんなが乗っていたと思う。あと1点だったが、ゲームセットまでベンチで戦っている姿勢を出せたのは良かった。今度は、これを勝ちにつなげられるようにチーム全体でしないといけないと思う」 三浦監督も少し興奮しているようだった。 現役時代を通じて「9回7得点」の経験はあるか?と聞かれ、記憶をたどった番長は「なかなかない」と笑みを浮かべた。 ファンを堪能させた。エンターテインメントとしてはこれでいい。だが、奇跡を起こしかけた9回の猛追を見せられると、逆に次々と「たられば」が浮かんでくるゲームだった。あの1点、あの失投、あのミスがなければ、9回に球史に残る逆転劇が起きたのではないか、と。