ブラザー工業が撤退見込みのローランドDGを巡る「TOB競争」 DG側に立ったファンドのCEOが意義を語った
産業印刷機中堅のローランド ディー. ジー.(DG)を巡る買収合戦はこれで終幕を迎えるのか。 ローランドDGに対抗的TOB(株式公開買い付け)を予告していたブラザー工業は5月9日、発表済みのTOB価格を引き上げないと発表した。ローランドDGは、投資ファンドで大株主のタイヨウ・パシフィック・パートナーズと組んだMBO(経営陣が参加する買収)を目指している。ブラザーはそこに「待った」をかけていた。 MBOの一環としてタイヨウが行っているTOBの期間は5月15日まで。この間、タイヨウはTOB価格を一度引き上げ、ブラザーの提示価格を上回る1株5370円とした。タイヨウのCEOでローランドDGの社外取締役でもあるブライアン・K・ヘイウッド氏に、これまでの経緯などを聞いた。
――ブラザー工業は、TOB価格を引き上げなかったことでローランドDGの買収を実質的に断念したとみられています。どう感じましたか。 相手の判断なのでこちらからはコメントを控える。ローランドDGとブラザーはそれぞれ強みが異なる。それぞれが自社の強みのある領域に注力していくことは日本にとってプラスになる。 ――ブラザーが対抗TOBを予告してくることは想定できましたか。 ブラザーかどうかはともかく、どこかが手を挙げてくる可能性は念頭にあった。競争があること自体はよいことだ。経済産業省が「企業買収における行動指針」を策定したことで、日本の株式市場がより活発化している。これまでは競争にならないM&Aの事例が多かった。競争環境が活発化することで、株主はメリットを享受できる。指針のコンセプトには大賛成だ。
株主からするとTOB価格が上がれば上がるほど嬉しい。しかし、私にとってローランドDGは、長く投資を続けてきた大好きな会社だ。買収されてだめになってしまっては悲しい。価格はもちろん重要だが、買収後に会社を強くするための計画も重要だ。 ■経産省指針は企業価値も大事と言っている ――ローランドDGが主張する「ディスシナジー」の話ですね。ただブラザーは、ローランドDGがディスシナジーを盾に過度な説明などを求めたとし、経産省の指針に沿わない行為だと指摘しています。これについては?