ブラザー工業が撤退見込みのローランドDGを巡る「TOB競争」 DG側に立ったファンドのCEOが意義を語った
■最初の価格がフェアだと思っている ――ブラザーの対抗TOB予告もあって、タイヨウはTOB価格を1株5035円から5370円に引き上げました。 いちばん最初に出した5035円がフェアな価格だと思っている。悪い数字ではなかった。しかしマーケットには競争がある。ブラザーが5200円を提示したことを受けて、タイヨウの投資リスクやローランドDGが抱えることになる負債などのバランスを勘案して改めて価格を出した。
タイヨウとしてはローランドDGの海外展開を一層サポートしていく。ローランドDGの海外売上高比率は約9割。マーケティング戦略にしても本社のある浜松市で練っているだけでは不十分。SKU(商品の最小管理単位)ごとに営業利益がわかるようにするなどの「見える化」も必須だ。 MBO後のイグジット(出口戦略)は完全に決めていない。(かつての親会社で)楽器のローランドと同じように再上場することは考えられる。経営者の賛同のうえでだが戦略的なバイアウトを検討することもあるだろう。
――MBOの狙いは短期間に集中して成長投資を行うためと、ローランドDGは説明しています。 深い変化を遂げるには、上場したままだと難しい。四半期ごとにいい数字を出さなければ、株価を下げるという形で市場から「バツ」がつけられるからだ。構造改革やリストラ、海外企業の買収などを行うと利益創出までに時間がかかる。非上場にすれば、そのような改革を強く推進できる。 資本主義を応援しているアメリカ人がこんなことをいうのはおかしいと思われるかもしれない。だが市場にはいい面もある一方で、短期的にしかものをみないという危険性がある。
■ローランドDGに「待つ」選択肢はなかった ――上場企業の多くは、たとえ株価が下がっても上場したまま成長投資や費用のかかる改革を行っていませんか。 株主がみな長期視点の投資家なのであればそれでもいい。しかし、経産省の指針にもあるとおり、敵対的でも積極的に企業買収ができる環境になっている。 経営者と会社にとって(株価を顧みないことの)リスクが上がっているのではないか。もちろんそのリスクがあるからこそ、日本の企業がより強くなる可能性が高まっていると思う。