「東京建築祭」18の名建築を無料で特別公開! 東京駅や三越日本橋本店などの普段は見られないエリアも開放。実行委員長・倉方俊輔さんが見どころ語る
「築地本願寺は設計者の伊東忠太による独創的な装飾や空間が注目されがちですが、実はあの時代に複合ビルとして建てられた点が革新的なんです。当時の寺院建築では分棟で建てられていた本堂、講堂、貴賓室といった各機能が統合されてひとつの建築としてつくられています。従来の木造ではなく、鉄筋コンクリートが登場したからこそ可能になった形式ですね。 今回の特別公開で、本堂以外の空間も一度にひとつの建物の内部で経験することで、その前提知識がなくても伝統的なお寺とは違う面白さを感じてもらえるのではないかと思います。加えて、ここがすごいのは結婚式や法事など、宗教的な行事が行われているときでも変わらず一般の参拝者を受け入れているというところです。本堂で催事が行われている後ろを仏教徒でもない一般人が出入りしている様子はほかではなかなか見られない大らかさがありますね。ここまで場を開くことに意識的な建築は、宗教建築でも珍しいと思います」
革新的な寺院建築の形式は、施主である西本願寺の決断なくしては実現し得なかったアイデアです。関東大震災を経て木造から鉄筋コンクリート造の建物に転換していった社会状況も、構造形式の選択に影響しているでしょう。そうした要件の上に、建築家が心血を注いで設計された建築が、その時々の状況に応じて手を加えながら90年近くも使われ続けている。個人の才能だけでは実現しない、社会との関わりによって初めて成立する創作物である点が、建築ならではの面白さだと倉方さんは言います。
建築を介して人や社会とつながる
「建築の面白さは、人の面白さに尽きます。面白い建築の裏には、それを必要としたクライアントがいて、クライアントの要求に応えた建築家がいて、そのアイデアをかたちにした技術者がいて、工夫しながら使っている人たちがいて、その皆が面白い。今回、ガイドツアーをいろいろな立場で建築に関わっている方々にお願いしています。建築を支える人たちとの出会いも楽しんでほしいです」 建築を見学する上でのポイントとなる情報は、オーディオガイドでも提供される予定です。 ただ、それもあくまで取っ掛かりとして使ってもらえれば、と倉方さん。 「面白い、という心の動きの基本は、自分が今まで知らなかった、新しいものに出合うことだと思います。それまで外観は見たことがあったけれど内部がどうなっているか知らなかった建物に、入ってみるだけでワクワクしたり、楽しいと思えるのではないでしょうか。知らないものと出合う喜びは、旅にも通ずるところがありますね。建築を面白がれるようになると、普段の街歩きから旅をしているような体験を得られるようになりますよ」 また、建築祭で建築を楽しむことを知った人に、ぜひその楽しみを一歩進めてほしいといいます。 「楽しい、という気持ちを自分のなかで留めずに、なにかアクションを起こしてもらえたら嬉しいですね。面白い建築を使ってお店を開いているところがあれば訪れてみるとか、自分が興味深かったことをSNSでシェアするとか。誰かの感想を見ることで、そういう見方もあるのかと楽しみが広がっていきます。そのようにして建築を気にする人が増えていくと、せっかく建てるなら今までにないものにしようとか、今ある貴重な建築を大切に使っていこうとか、人びとの想いが街を豊かにすることにつながっていくと思うんです。面白い、という感情はそれだけで社会的行為につながっていくんだということは、これまで建築公開イベントの運営に携わるなかで実感することですね。一人の熱い想いが社会を変えていく原動力になるんだ、社会は変えていけるものなんだ、ということは僕自身がこのイベントを通して皆さんに共有したいことでもあります」 東京建築祭は、5月25日(土)26日(日)を中心に開催されます。有料のガイドツアーの申し込みは締め切っていますが、25日・26日の特別公開はどれも無料・申し込み不要で見ることができますので、ぜひ公式のWEBサイトで詳細をチェックしてみてください! ●取材協力 東京建築祭実行委員会
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