<上海だより>文芸的な道、紹興路を歩く(1)レスリー・チャン生誕60周年
上海の中心を流れる黄浦江を境に、西と東でその姿は大きく異なります。超高層ビルが立ち並び、万博会場にもなっていたのが東側の浦東(プードン)で、英米仏、そして日本が租界を開拓し今もショッピングの中心地となっているのが、西側に位置する浦西(プーシー)です。その浦西の旧租界エリアの中でも、最も文芸的な道の一つとして知られている紹興路(シャオシンルー)を歩いてみます。
フランス統治時代の紹興路は「Route Victor Emmanuel III」という名で呼ばれていましたが、1943年から現在の名前に変更になりました。道の長さが500mほどしかなく、幅も12.3mから18.5mほどの小さな道ですが、非常に大きなプラタナスの並木が印象的で古い洋館や石庫門様式の住宅が多く、晴れた日にはとても心地良い場所として上海でも人気です。中国で最も有名な文芸誌の《故事会》を発行する上海文芸出版総社や上海新聞出版局などの出版系企業や劇場、カフェ、書店などが並んでいることから、文芸的な道というイメージが定着しています。
この道で特に知名度の高いお店の一つが「漢源書店」です。有名な写真家である爾冬強(アール・ドンチアン)と歴史作家のテス・ジョンストンが共同でオープンしたお店で、書店という名前でありながら、店内の書籍のほとんどはオーナーのコレクションであり非売品です。主に民俗学やアート・建築系、文学作品などが多く揃えられており、店内で飲み物を注文すると閲覧することができる私設図書館のようなお店です。アンティーク家具で統一された店内には、レイ・チャールズやエラ・フィッツジェラルドなどのヴォーカル・ジャズがさりげなく流れており、落ち着いて読書を楽しむことができます。
また、今は亡きアジアの大スターであるレスリー・チャンも愛したお店ということでもファンの間では有名です。レスリー・チャンという名前に、若い人はピンと来ない人も多いでしょうが、80年代から90年代にかけての香港映画全盛期における最重要人物の一人です。