米朝会談で慶応・礒崎氏が会見(全文)北の体制がずっと続く可能性で議論を
実験の中止、査察をゆっくりやると過去と同じに
記者3:(英語) 礒崎:ありがとうございます。非常に不安定な中で交渉が行われているようですから最終的には分かりませんが、ご存じのとおり北朝鮮は段階的な非核化を求めています。すでに北朝鮮はアメリカ人を3人解放し、政治ショーかもしれませんけども核実験場を廃棄しました。しかし今のところは、北朝鮮に得ている具体的な利益というものはありません。単に戦争を避けたいだけであれば、韓国と対話するだけで十分です。つまり6月12日に大きな合意をしたとしても、それに対して北朝鮮が得られるものがなければ、一方的に北朝鮮が損をしてしまう、このことに北朝鮮は懸念を持っているようです。 しかし実験の中止、そして申告、そして査察という段階的なものをゆっくりと進めていけば、過去の繰り返しになってしまいます。しかも査察というものは何年、何十年たっても終わりということはありません。ですので、取りあえずの合意としてはアメリカが求めているような一括合意、一気に合意ができるような形に見える、超短期的なタイムスケジュールによる段階的な合意が現実的であるように思います。 90年代には枠組み合意、2000年代には6カ国協議がありました。しかし今回は1点だけ明確に違う側面があります。これはサミット外交で動いているということであります。北朝鮮の国家の性質上、金正恩国務委員長本人に今の現状を認めさせて、情報を求めるというやり方はうまくいくかもしれません。その可能性は秘めているということです。以上です。
拉致被害者の奪還へ手段はより柔軟であるべき
記者4:(英語) 礒崎:ありがとうございます。北朝鮮は、トランプ大統領が人権問題を明確に主張していないからこそ取引の可能性があると考えたのでしょう。繰り返しますが北朝鮮は体制を変化させたいのではない、体制を温存するために核だけを取引に出そうとしているということです。時間がたてばたつほどアメリカ側の要求も大きくなるに違いありません。だからこそ北朝鮮も短期に、一気に物事を解決したいと考えているはずです。 拉致問題は依然としてわが国にとって重要な問題です。韓国の大統領やアメリカの大統領に頼むだけではなく、やはり日本外交の懸案でありますから、日本が自ら動いて北朝鮮に交渉を仕掛けなくてはなりません。被害者であるわが国にとっては理不尽な外交になり得ますけれども、それでも拉致被害者の奪還という目的を達成するために手段はより柔軟であるべきであると考えます。