米朝会談で慶応・礒崎氏が会見(全文)北の体制がずっと続く可能性で議論を
北朝鮮の「改革開放」は慎重に進めるだろう
2番目のご質問でございますが、北朝鮮の経済改革開放、特に開放の部分につきましては相当、慎重に進めるものと思います。一党独裁を続けながら体制を維持することのできた中国、ベトナム、ラオス、キューバといった国々の例から教訓を得るものだと思います。しかし北朝鮮の経済の基本は自分の力で国を立て直すという自力更生であります。制裁を受けてしまって制裁の影響が出るのは貿易を増やしたせいだということで、対外貿易を批判することもあります。もちろん予想外のことは起きるかもしれませんけども、北朝鮮にとって重要なのは、あの体制を温存させることであり、核を持つというのも1つの手段でしたが、経済発展をするというものも、その1つの手段にすぎません。少なくとも目的と手段を混同するような、非論理的な体制には見えません。以上です。
金正恩氏はトランプ氏を信頼し切ってはいない
記者2:(英語) 礒崎:はい。ありがとうございます。金正恩国務委員長はもちろんトランプ大統領のことを信頼しきってるようには思いません。予想外のことがたくさん起きています。3月8日にトランプ大統領が首脳会談にゴーサインを出したこと自体、北朝鮮には驚きでありました。その証拠に、その直後、3月の中旬から北朝鮮の労働新聞では、トランプ大統領に対する名指し批判が突然なくなりました。1月1日、元日に韓国に対話を呼び掛けた時点で、アメリカとの首脳会談を想定しているならば、そのころからトランプ大統領への名指し批判をなくしたり、減らしているはずであります。しかし昨年のように核実験、ミサイル実験を続ける中でも、一貫して対話を主張するような文在寅大統領、北朝鮮の理解者、北朝鮮の論理をよく理解している文在寅大統領があと4年間の任期をもって隣の韓国にいるということは、金正恩国務委員長の背中を押したのではないかと思います。 北朝鮮はわれわれが持っているのと、われわれが北朝鮮に持っているのと同じぐらい北朝鮮は民主主義国家に対する不信感というものを持っています。特にアメリカでは政権交代が行われますから、トランプ大統領のあとに来るアメリカの政権が、今回の合意を引っ繰り返す可能性もあるからです。その不信感を払拭するために、北朝鮮が納得できるような体制の安全を保証するための複数の制度が設置できるか、これが1つの大きなポイントかもしれません。 2番目の質問とも関係がありますが、北朝鮮もトランプ大統領と会って、トランプ大統領と会ったばかりにトランプ大統領をむしろ怒らせてしまう、そういった可能性、そういったリスクも考えながら6月12日に会談が開かれるということは考えておかなくてはなりません。大きな合意ができなかったとしても、残念なことに大きな合意ができなかったとしても、アメリカ、韓国、中国、ロシアなどと首脳会談を行い、対話を続けていれば戦争は避けることができる。アメリカとの直接衝突は避けることができると北朝鮮は考えていると思います。以上です。