デマンドバスと「コード決済」の相性抜群? 地域密着型キャッシュレス化で「高齢者排除論」はもう古いのか?
デジタルデバイド懸念の現実解消
この背景には、まずコミュニティーバス特有の運行ペースが影響している。 地方自治体や地元商工会が運行するコミュニティーバスは、主に「交通弱者」の利用を目的としており、特に移動速度が遅くなった高齢者が主要な対象となっている。ドライバーはこの点を理解しており、決済時に手間取っている乗客を急かすことはほとんどない。特に時刻表がないデマンドバスでは、この対応が顕著だ。 また、高齢者がスマートフォンを所有するようになったことも一因だ。 「キャッシュレス決済はスマートフォンを使えない高齢者を排除する」 といった議論が繰り返されるが、現在では多くの高齢者がスマートフォンを所有している。モバイル社会研究所が2024年3月に実施した調査によると、 ・60代:9割以上 ・70代:8割以上 ・80代前半:6割以上 がスマートフォンを所有していることがわかった。 新しい交通サービスが登場する度に「高齢者の多くはスマートフォンを持っていないため利用できない」といった懸念が浮上していたが、実際には70代、80代の過半数がスマートフォンを所有しており、高齢者を一律にデジタルデバイド(情報格差)の対象とする見方は現実的でなくなっている(※しかし、同年8月に実施された調査では、60代の約4割、70代の約6割、80代の約7割がスマートフォンを使いこなせていないと感じていることも明らかになっている)。
コミュニティーバスと決済の融合
第三に、コード決済サービスが自治体と連携し、地域限定の還元キャンペーンを積極的に実施している点が挙げられる。 ・PayPay ・d払い ・楽天ペイ などのサービスは、自治体の予算を活用し、地域の中小店舗での買い物に対する還元を行う仕組みを提供している。このため、全国チェーンの店舗(コンビニエンスストアやファミリーレストランなど)では還元ポイントは発生しない。 一方で、地元のコミュニティーバスは商店街の店舗と同様に「地域密着型のサービス」であり、還元キャンペーンの対象となる可能性が高い。例えば、商店街での買い物で得たポイントを運賃支払いに充当することも可能だ。コード決済は手間がかかる場合もあるが、その分、消費者が実感しやすい還元キャンペーンを提供している。 このように、コミュニティーバスとコード決済は非常に相性がよく、地域経済の活性化に寄与する可能性が高いといえる。