ジョブ型採用は「日本になじまない」と言われる中で出てきた「スキルベース型」って?
「スキルベース」とは、スキルに基づいて何らかの意思決定を行うこと。人事では、従業員や採用候補者の持つスキルを基準に採用、評価、配置などを行うアプローチを指します。学歴や経験ではなく、スキルを基準に候補者を評価する「スキルベース採用」や、個人のスキルを基準に人材マネジメントを行う「スキルベース組織」が昨今注目されています。
世界のトレンドはスキルベース採用!? ジョブ型・メンバーシップ型とのちがい
近年、日本では米国の雇用慣行であるジョブ型採用を取り入れる企業が増えてきました。一方米国では、ジョブ型のあり方が見直されています。 ジョブ型採用では、ある人材を営業職として採用した場合、営業以外での活躍は想定していません。そのため、そのポジションが役割を終えれば、解雇するのが通常のフローでした。しかし、その人材が別のスキルを持っていた場合、解雇ではなく異動してもらったほうが、企業にとっても個人にとっても都合がいいことがあります。企業にとっては採用工数を減らせ、個人にとっては別のキャリアの扉が開くとともに、安定した雇用機会を得られるからです。 こうして昨今、米国では、スキルベース採用・スキルベース組織にスポットライトが当たるようになってきました。従業員のさまざまなスキルを把握し、それらを生かせるように幅広く活用することで、柔軟な組織運営やパフォーマンス向上につながるのです。 スキルベース採用の特徴は、専門スキル、ソフトスキル、資質、性格といったものを「スキル」と捉えて総合評価すること。また、従来当たり前に行われてきた、学歴や経験をみて振るい落とす「スクリーンアウト」の考え方ではなく、スキルを持ち活躍の可能性がある候補者を残す「スクリーンイン」の考え方に基づいています。 スキルベース採用は、日本で行われてきたメンバーシップ型採用と似ている点もあります。例えば、異動によって柔軟に人材マネジメントを行う点が類似しています。メンバーシップ型採用と大きく異なるのは、採用前に求める人材の要件定義ができていること。そして、人材の具体的なスキルに合わせて、任せる業務を設計していることです。 メンバーシップ型採用では、スキルだけでなく、学歴や過去の職務経験が総合評価されるため、スキルがあっても一定の要件に達しない候補者は不通過となってきました。スキルベース採用はそうした振るい落としを避け、スキルに集中することで、有望な人材を選考に進めることができます。これにより、従来の採用基準では見逃されがちだった「隠れハイパフォーマー」を見いだすことができ、労働力不足の解消にも寄与します。 スキルベース採用において重要なのは、ペルソナ設定。自社に必要なスキルや人材像を具体的に言語化することで、母集団を増やすために無理やり要件を緩めることなく、間口を広げることが可能になります。 ジョブ型採用は「日本になじまない」と、時に批判されてきました。ジョブ型の「仕事」を中心とした人材マネジメントと、メンバーシップ型の「人」を中心とした人材マネジメント。スキルベース採用は、両者のいいところ取りいれた採用形態として今後日本に浸透していくかもしれません。