暴徒化する若者と女性の行進 トランプ就任のアメリカを追う
超大国アメリカ。しかし今ではその威信に陰りも見えている。そんな中、「アメリカ第一主義」を掲げて大統領選を勝ち抜いたトランプ大統領は選挙中、反移民的だったり女性蔑視的だったり数々の過激発言や暴言を口にしてきた。アメリカはどう変わるのか。世界が注視したトランプ氏の大統領就任式。フォトグラファーの鈴木雄介氏がその前後のアメリカを追った。
就任前夜
1月19日、トランプ米大統領の就任式に合わせて、僕はワシントンD.C.に向かった。この歴史的な瞬間を、自分自身の体で体験しておきたかった。 ニューヨークからワシントンまで友人のジャーナリストたちと車を飛ばし、映画「フォレストガンプ」で有名なリンカーン記念堂前を訪れると、就任式前夜のイベントが盛大に行われていた。 ロックバンドが愛国的なカントリーロックを演奏し、色とりどりの花火が夜空を鮮やかに染める。会場に設置されたスクリーンにトランプ氏が映し出されると熱狂的な歓声が上がった。まるでロックフェスティバルの会場にいるかのような高揚感に人々が陶酔する 。トランプ氏を支持する人々の熱気と一体感が会場を包んでいた。 閉塞感に覆われた今のアメリカを、どうにかしてほしいという人たちのトランプ氏に対する思いを感じた。
就任式の朝
1月20日、トランプ氏の大統領就任式の当日朝、僕はひとまず会場近くまで行ってみることにした 。 就任式会場があるエリアに入るには、憲兵と警官とフェンスで仕切られたセキュリティーチェックをくぐり抜ける必要があり、大勢の人々が長い列をなしていた。アメリカ国旗を掲げる人、トランプ氏の謳い文句「Make America Great Again」とデカデカと書かれた帽子やTシャツを着る人。 無数にあるチェックポイントの一つでは反トランプ派の若者数人が、自らの体を鎖でフェンスに巻きつけていた。その周りを仲間たちが囲み、警官たちと小競り合いが起こっている。どうやらチェックポイントを封鎖しようという試みらしい。 朝一番でこの様子なら、何か大きな事が起こるかもしれない。そう思わせる空気が漂っていた。