暴徒化する若者と女性の行進 トランプ就任のアメリカを追う
一触即発
就任式会場にある複数のチェックポイントを見て回っていると、友人のフォトグラファーから連絡が入った。デモを行っている一部の若者が暴徒化し、カフェや銀行の窓を叩き割り始めたらしい。 すぐに現場に駆けつけると、100人以上の警官たちが抗議者たちと睨み合っていた。道路に沿って警官隊が人間の鎖のように並び、催涙ガスや、爆音や閃光を伴うスタングレネード、ペイントガンで武装した暴動鎮圧部隊が睨みを利かせる。 道路を封鎖する警官たちに罵声を浴びせる若者たち。警官たちの輪の向こう側には追い詰められた一部の抗議者たちが見える。 仲間の抗議者たちは外から大きな声で彼らを励ます。 一人、また一人と警官に逮捕されていく。報道陣も、一歩車道に降りようものなら逮捕するぞと釘を刺される。一触即発の緊張した空気が現場に張り詰めた。
衝突
若者と警官。一触即発の空気の中で突然、10メートルほど離れたところで大きな怒声が起こり、人の波が動いた。反射的にカメラのファインダー越しにそちらを向くと、デモ隊に向かって警官隊がペッパースプレーを浴びせているのが見えた。 顔面にペッパースプレーを浴びた若者がたまらず途上に倒れこむ。それをきっかけにして、ダムが決壊するかのようにデモ隊と警官隊が衝突し始めた。 道路にデモ隊があふれ出て、警官隊に投石を始めた。路上の新聞ポストが引きずり倒された。若者たちは大通りを縦横無尽に走り、警官が配備されていない通りへとなだれ込んだ。暴動鎮圧部隊が彼らを追いかけ、大きな交差点で両者は対峙した。
爆発音と閃光
若者たちの暴徒化は止まらない。拳以上の大きさのレンガや石を投げつけるデモ隊。仲間が投げたレンガが運悪く後頭部に直撃した若者が崩れ落ちる。 暴動鎮圧部隊がスタングレネードを投げ込み、あちこちで爆発音が上がった。ペイントボールガンで撃たれた人々や、催涙スプレーを顔面に浴びた若者たちが路上にうずくまり悶えている。 僕はできるだけ警官たちとデモ隊の両者に近づいた。突然、足元で何かが光り、バットで殴られたような強い衝撃を右足に感じた。スタングレネードが足元で炸裂したようだ。 出血してかなり痛むがまだ歩ける。デモ隊と警官隊と報道陣が入り乱れて、もはや警官たちも闇雲に撃つしかなかった。