キャストも脚本も監督も超一級品…Netflix「地面師たち」が地上波ドラマを圧倒して変わる風景
チームワークはイマイチ
竹下(北村一輝)はリサーチ担当。詐欺に使えそうな土地、騙せそうな相手を探す。覚せい剤中毒で、頻繁にキレる。ハリソンに対してはベラボウな金額の分け前を要求する。グループ内の問題児だ。 長井(染谷将太)は詐欺に欠かせない免許証やパスポート、保険証の偽造担当。偽の土地所有者のためにつくる。通称・ニンベン師。パソコンを使って本物とそっくりの書類をつくる。犯罪者の臭いがせず、ゲーム好きの学生のように見える。 稲葉麗子(小池栄子)は手配師。偽の土地所有者になる人物を探す。麗子が探すのは候補者で、最終的に選ぶのはハリソン。演技力や見た目が本物と似ているかどうかは問わない。本物と思わせる説得力を重視している。たとえば気弱そうな老人を選ぶ。 オロチ(アントニー)は竹下に使われているチンピラ。辻本にも従順だが、頭が悪く、命じたことがろくに出来ない。おまけに怠惰で、地道な仕事もやりたがらない。人を脅かすのは得意だ。 オロチを除くと、仕事の腕はいいのだが、チームワークはイマイチ。これがグループの最大の弱点となっている。だから詐欺が成功するかどうかハラハラさせられる。 ハリソンたちはもちろん警察に追われている。定年が迫った警視庁捜査二課の刑事・下村辰夫(リリー・フランキー)は地道にハリソンを追っていた。しかし、課内では捜査を秘密にしていた。なぜなのか。 下村の部下は倉持玲(池田エライザ)。刑事ドラマを観て刑事になったこともあり「捜査一課志望です」と平然と言い、下村を苦笑させる。およそ熱意が感じられなかったものの、あることによって覚せいする。後半のキーパーソンの1人となる。 地面師たちのターゲットになるのは石洋ハウスの開発事業部部長・青柳隆史(山本耕史)である。普段なら地面師の誘いなど一蹴しただろうが、土地取引が失敗したばかりで焦っていた。派閥争いも背景にあった。 原作は新庄耕氏(40)の同名人気小説。監督と脚本は大根仁(55)が担当した。大根氏はフジテレビ系「エルピス-希望、あるいは災い-」(2022年)などの演出を担当したベテランである。 脚本がいい上、俳優はいずれも適材適所。面白くならないはずがない。豊川は善玉も悪玉もうまい。また、いつもながら安定した演技を見せる綾野の存在が作品全体の背骨の役割を果たしている。 リリー・フランキーは晩年を迎えた男を演じさせたら天下一品だ。山本は地上波ドラマではコミカルな役が多いものの、シリアスな役もうまい。これだけの出演陣を地上波ドラマで集めるのは不可能に違いない。ギャラが足りない。