活動歴13年の古参YouTuberが年内で“卒業” 決断の裏にあったプラットフォームの変化とは
YouTubeチャンネル「サグワダイアリー」を運営するサグワが、2024年12月31日をもってチャンネルの更新を終了することを発表した。活動歴13年、古参YouTuberはなぜ横動画制作の“卒業”を決めたのか。サグワの決断理由から、YouTubeの変遷を辿ってみたい。 【写真】卒業を報告する古参YouTuber「時代が終わっていく…」 2011年10月17日にYouTubeにチャンネルを開設したサグワは、2016年に投稿した動画で発した「抹茶ってなに?」というフレーズで一躍注目を集めた動画クリエイター。日常生活を写したVlog動画で人気を博し、アパレルブランドや飲食店を手がけるなど実業家としても活躍。チャンネル登録者数56万人を抱える古参YouTuberのひとりだ(2024年10月31日時点)。 活動13周年を迎えた10月17日、サグワが1本の動画を投稿し、「今年でサグワダイヤリーを卒業いたします」と突如YouTubeでの活動を終了することを発表した。ただ、卒業といっても動画の制作や出演を完全に辞めるわけではない。交際を公表している動画クリエイター・古川優香の動画には「出る」と述べると、「TikTokもやるし、(Instagram)リールもやる」と、SNSでの動画投稿は継続すると発言。さらに手がけているアパレルブランドや飲食店も続けることも明言しており、「まあ、変わらないですよ」と話す。 実はサグワのいう“卒業”は、「YouTubeでの横動画(長尺動画)をやめる」というもの。動画の制作や表だった活動から遠ざかるということではない。「続けてきたことを辞めるって、勇気がいります」というものの、「辞めたときに、自分の人生にどういうことが起きるのかも楽しみ」と前向きな卒業であることは確かだが、一体なぜサグワはYouTubeでの活動を止めるのか。今回の動画でカメラを回していたYouTuber・マーキュリー商事は、サグワからの「聞いたときどう思った?」という問いかけに、「ショートやりたいってそういうのも話は聞いていた」「時代を見てるんだなと俺は思う」と発言。横動画をメインとしていたYouTubeでの活動を終わらせるのは、時代の変遷であることが読み取れる。 YouTube日本版が開設されたのは2007年6月で、サグワが動画投稿を開始した2012年はまだYouTuberという言葉はなく、「動画投稿系男子」と呼ばれていた時代だった。当時は横動画のみで、1分から5分程度の短いコンテンツが主流。そこから横動画は20分~30分ほどの尺が主流になり、2021年に縦型の短尺動画「YouTube ショート」が導入されると、ショート全盛期時代に突入した。トップYouTuberたちも次々に短尺動画の制作にチャレンジし、しばらくはコンテンツの使い分けを見極める期間が続いていたが、コロナ禍以降はYouTubeをテレビで視聴するユーザーが増加し、2023年6月時点で3800万人が「コネクテッドテレビ」で視聴していることがわかっている。そういった背景もあり、長尺動画はさらに質が求められ、尺も1時間程度のものが増えるなど市場が変化。さらに10月15日からは同日以降にYouTubeにアップロードされた正方形または縦長の3分以内の動画はショートに分類されるようになるなど、YouTubeの規定も変化しつづけている。 (参考:3 分間の YouTube ショートについてhttps://support.google.com/youtube/answer/15424877?hl=ja) YouTube ショートのほか、TikTokやInstagramのリールなど短尺動画が定着してきたいま、短尺動画にチャレンジすることは動画クリエイターたちにとっては必須項目になってきているように感じられる。もちろんサグワもこれまでYouTubeにショート動画も投稿してきているが、このタイミングで心機一転、YouTube以外のプラットフォームでの縦型短尺動画により力を注ぎたいということなのだろう。 13年という長期間、多くのファンを楽しませてきたサグワの決断には、「時代が終わっていく…」「うちの青春一つまた幕閉めたのか」と寂しさを覚える視聴者もいる一方、「マジで人生のセンスがいいと思う人第1位」「引き方がかっこいい」と、卒業の仕方に称賛が集まっている。さまざまな事業を手がけ、軌道に乗っているからこその決断なのかもしれないが、時代の流れに沿った卒業はなんとも清々しいものだったようだ。
せきぐちゆみ