世界で「予想」が覆された2016年 重大ニュースで振り返る
【4】南沙諸島領有に関する国際法廷で中国敗訴
7月12日、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は、フィリピンが提訴していた南シナ海の領有権問題に関して、中国が主張する境界線を認めない判決を下しました。海上進出を強化する中国と周辺国の対立として注目されたこの裁判に関して、中国は「国際海洋法条約に基づく裁判所に領有権を審理する権限はない」と主張。判決を無視する構えです。 その一方で、中国はフィリピンとの対話を重視する立場を堅持。これに対して、5月の大統領選挙で勝利していたドゥテルテ氏は、フィリピンの人権状況に批判的な米国との関係を見直す考えを示す一方、中国との対話に前向きです。大国間の力関係を利用する小国の外交は、中国の海洋進出を加速させるとみられています。
【5】サウジとイランの国交断絶
1月3日、サウジアラビアはイランとの国交断絶を宣言しました。その直接的なきっかけは、サウジ政府が反体制派と目したシーア派指導者を処刑したことを受け、シーア派中心のイランでサウジ大使館が焼き討ちされたことでした。 サウジとイランはどちらもイスラム圏の大国ですが、もともと宗派、民族、政治体制のいずれも対照的で、いわば犬猿の仲。長く「ペルシャ湾の憲兵」だった米国の影響力が低下するなか、地域大国である両国は、それぞれ独自の行動をとり始めており、内戦が続くイエメンでは、政府と反政府勢力をそれぞれが支援する「代理戦争」が展開されています。サウジとイランの国交断絶は、流動化する中東情勢の縮図といえるでしょう。
【6】コロンビア和平合意に関する国民投票が否決
10月2日、コロンビア政府と共産主義ゲリラFARC(コロンビア革命軍)の間で交わされていた和平合意が、国民投票で拒絶されました。 FARCは1964年から、キューバやベネズエラの支援を受け、コロンビア政府を攻撃し続け、市民の誘拐や殺害、麻薬売買などにも手を染めてきました。これとの和平交渉を進めたサントス大統領は、今年のノーベル平和賞を受賞するなど、国際的に高い評価を得ています。 しかし、国内には「多くの犠牲者を出したにもかかわらず、FARC関係者への処罰が軽い」という不満があります。今回の国民投票の結果は、半世紀以上にわたって続いてきたコロンビア内戦の終結の行方を不透明にしただけでなく、戦闘の後の和解の難しさをも浮き彫りにしました。