日本は本当に東洋なのか?――中国との関係で考える日本文化(上)
2度目の東京オリンピックまで残り1年余りとなりました。前回の1964年の東京オリンピックでは女子バレーボールチームが金メダルを獲得。「東洋の魔女」と呼ばれたチームの活躍を覚えている人は今、どのくらいいるのでしょうか。 ところで、建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、ある留学生の言葉をきっかけに「日本は本当に東洋なのか」と疑問を持つようになったといいます。日本の文化を考えるうえで欠かすことができない中国との関係を振り返りながら、若山氏が独自の「文化力学」的な視点から論じます。
中国と日本・西洋と東洋
大阪で開かれたG20は、その直後の板門店米朝会談が劇的な話題となってしまったが、最大の焦点であった米中経済戦争が小休止したという点で、それなりの成果というべきであろう。もう一つの焦点は日中首脳会談であったが、これも「完全に正常軌道」に戻ったとし、来年桜の咲くころ、習近平国家主席が国賓として来日することで合意したという。とりあえず中国の姿勢は国際協調に向かっているようだ。 先に「アメリカ文化と日本文化の意外な共通点」を二回に分けて書いたが、今回は、日本文化を中国文化との関係から考えてみたい。日本文化が、中国との長いつきあいにおいて形成されたことはまちがいないのだ。しかしここはまず大きくスコープを広げ「西洋と東洋」という視野において「日本は本当に東洋か」という一見荒唐無稽な問いかけから始めよう。
日本は「west」
江戸末期以来、日本は「西洋」と対峙し、自らを「東洋」と位置づけてきたが、このところのヨーロッパの凋落と中国の台頭によって、その意味合いが微妙に変化しているのだ。 実はケニアからの留学生に言われて「えっ」と思ったことがある。世界の建築様式の比較を論じていたとき、彼は「先生、アフリカから見ると日本はwestなんですよ」「そんなバカな」「本当です。でも中国はeastなんです」というのである。たしかにケニアから見て、かつての宗主国イギリスは「west」であり、アメリカはその延長、日本はさらにその延長と見えないこともない。そしてイスラム圏やインドや中国は、ユーラシア大陸における「east」と見えるのも理解できる。特に19世紀後半以後の歴史は、そういうふうに考えることも可能なようだ。 それ以来「果たして日本は本当に東洋なのだろうか」と疑問に思い始めた。