老後の住み替えはワナがいっぱい…今の住まいは「終の住処」となりうるのか?
【失敗事例】自宅マンションが旧耐震基準のため売れず…ローン支払いに四苦八苦
63歳の加藤さん(仮名)ご夫婦は、定年後に今住んでいるマンションを売って、最寄り駅のそばに建つ新築タワーマンションを購入しようと計画していた。引き渡しまでは、約2年間あり、その間に売却すればいいと、新築タワーマンションの契約を締結した。 資金は、退職金と貯金、自宅を売った資金があればローンを組まずに買える計算だ。 加藤さんが所有するマンションは3LDKで82㎡と広く、過去にリノベーションもされている。おしゃれとまではいかないものの、すぐにでも住める状態である。 築45年のマンション、「旧耐震基準」が思わぬ落とし穴に…… ところが、一向に売れる気配がない。築45年という点が思わぬネックになったのだ。それは「テレワークできる広い部屋を探している」という買い手候補が現れたときのこと。もう一歩で正式に契約……という段階にまできて、「旧耐震基準」のため、担保割れとなり、買い手が希望していた額のローン審査が通らなかったのである。 さらに、耐震基準適合証明書が発行されず、住宅ローン控除も使えないという。金融機関を変えても同じ状況でこの契約はやむなく流れた。なかには旧耐震基準というだけで相談すら受けてもらえなかった金融機関もあったという。 その後も幾度となく内見には来るものの、同じような状況で成約にはいたらない。 そして時は流れ、新築タワーマンションの引き渡し時期になった。 加藤さんは致し方なく、新築タワーマンションにありったけの預貯金と退職金をつぎ込み、残金はローンを組んで購入した。なんとかローンは組めたものの、年齢的にも完済時年齢を考えると20年間も借りることができなかった。 しかも、今は再雇用のため収入はかつての6割ほど。にもかかわらず旧居と新居両方の管理費や修繕積立金、固定資産税等の維持費、新居のローン返済が家計を圧迫してキツイ状況だ。 不動産会社からは「ローンの借入額が少ない方か、現金(キャッシュ)で購入できる買い手候補じゃないと難しいかもしれません……」とまでいわれる始末。 終の住処として、憧れの新築タワーマンションを選んだが、これでよかったのだろうか。こんなことなら、住み慣れたわが家を預貯金の範囲でリノベーションした方がよかったのではないか……。今は、旧居を大幅値下げし、買い手がつくのを待っている……。