老後の住み替えはワナがいっぱい…今の住まいは「終の住処」となりうるのか?
今の住まいは、あなたの老後や終の住処になりうるのだろうか。住まいである不動産は、財産のなかでも大きな割合を占める。それゆえ売買など住み替えする際には大きなリスクを伴う可能性がある。そこで実際にあった、シニアの住み替え事例のなかから、成功事例と失敗事例をご紹介したい。 高齢者向け住宅の特徴や費用感って? 目次60歳前後で今の住まいを見直す人が多い【成功事例】自宅を売却せず賃貸に移りダウンサイジング!お金に困らず穏やかな暮らしを楽しむ【失敗事例】自宅マンションが旧耐震基準のため売れず…ローン支払いに四苦八苦「人生最後の大きな決断」 タイミングが難しい
60歳前後で今の住まいを見直す人が多い
人生100年時代といわれるほど、我々は長生きするようになった。当然ながら生きるためには拠点となる住まいが必要だ。 例えば、「子どもが独り立ちし、家族構成が変わった」「足腰が弱り段差が少ない家に住みたい」「定年後は温泉や海外など旅行がしやすい立地に住みたい」など、今の住まいを選んだ時点と、大きく状況や趣向が変わっているのではないだろうか。 我々人間も社会も、時の経過とともに状況が変化するのは当然のことともいえる。 実際、国土交通省が公表する住宅市場動向調査によると、一次取得者は、すべての住宅形態で「30歳代」が多いのに対して、二次取得者は、ほぼ全ての住宅形態で「60歳以上」が多いのがわかる。 ちなみに一次取得者とは、はじめて住宅を取得した世帯。二次取得者とは、2回目以上の取得となる世帯のことをいう。つまり、60歳前後で今の住まいを見直す人が多いということだ。例えば注文住宅を二次取得する場合、60歳以上の人の割合が55.9%にも上る。 二次取得者の世帯主の年齢 しかし、住み替えにはリスクがつきもの。慎重に判断しなければならない。実際にあったシニアの住み替え事例から、「老後の生活」や「終の住処」選びの参考になりそうなものを紹介していく。
【成功事例】自宅を売却せず賃貸に移りダウンサイジング!お金に困らず穏やかな暮らしを楽しむ
まずは、住み替え成功事例から紹介する。 都内のUR賃貸住宅に暮らす68歳の清水恵子さん(仮名)。恵子さんは3年前に夫を急性心不全で亡くした。旦那さんとは40年以上連れ添い、ご子息にも恵まれ、幸せそのものだったそう。 だがある日突然、夫が他界。まもなく退職して、老後を2人で楽しもうと計画していた矢先のことであった。当時住んでいたマンションは、息子が小学校に上がる前に2人で選び購入したもので、思い出がいっぱいだ。 落胆のあまり、ふさぎ込み、遺品整理もままならない母を見かねた息子が、「住み替え」を提案した。 そのときは決心がつかず、曖昧な返事しかできなかったが、遺品整理を始めるきっかけにはなったという。 3LDK73㎡の分譲マンションから1LDK45㎡のUR賃貸住宅へ 思い出の品を手に取り、片づけていると、心も少しずつ整理されていくように感じたそう――。 数カ月後、息子に「この家を売って、引っ越しすることに決めたわ」と伝えたところ、「思い出が詰まったわが家を売らなくてもいい方法がある」と息子が言う。 実は息子が知り合いの不動産会社に相談してくれており、「家を賃貸に出すと15万円ぐらいで貸せるらしい」ということがわかったのだ。家を売って、買い替えるしかないと思っていた恵子さんはとても驚いた。 その後、気になっていたUR賃貸住宅を息子さんと2人で見学。おしゃれにリノベーションされた部屋を賃貸契約することになった。 家賃2カ月分の敷金を払っただけで、礼金や仲介手数料、保証人も不要。更新料も不要。新居は45㎡の1LDKで、家賃は管理費込みの約10万円。 自宅は本当に月々15万円で貸すことができた。幸いにも、住宅ローンは完済済み。また、遺族基礎年金と遺族厚生年金を合わせて毎月13万円ほどの収入がある。 月収は合わせてざっくり28万円。1000万円の夫の生命保険金も手つかず。新居の家賃と自宅の管理費等の3万円を差し引いても、残りの約15万円は生活費や趣味に使える。 愛着のある自宅を手放さずに賃貸に出し、自身はおしゃれな賃貸住宅暮らし。年金と家賃収入で悠々自適な生活を送れているそうだ。 次に、住み替えの失敗事例を紹介したい。