柄本佑インタビュー『光る君へ』道長は、賢子が我が子と気づいていたのか、いないのか。娘には罪悪感、心にはいつも「まひろちゃん」が
大河ドラマ『光る君へ』は終盤に向け、吉高由里子さんが演じる主人公「まひろ/紫式部」がどうなるのか?とともに、ソウルメイトである藤原道長の栄華と苦闘の姿が注目を集めている。道長役の柄本佑さんは、歴史のうえで語られる栄華を極めた傲慢な道長のイメージとは違う人間味のある新たな道長像を見せている。それは道長が詠んだ「この世をば わが世とぞ思ふ 望月(もちづき)の…」という有名な和歌の奥深い意味を考えさせられるものだ。栄華の中で出家した道長の心境はどんなものだったのだろうか? 出家に際し、実際に長い髪を剃髪した柄本さん。ドラマはこれからも大展開をするが、10月25日にクランクアップした柄本さんに、『光る君へ』への思いを語ってもらった。 (構成◎しろぼしマーサ 写真提供◎NHK) 【写真】望月の歌を詠んだ道長に、銀粉が舞い降りるシーン * * * * * * * ◆藤原道長という役 ━━撮影開始から約1年半、クランクアップして、振り返っていかがですか。 『光る君へ』は、これから最終回までいろいろなことが起こります。ドラマの放送は続いているから、終わったという実感が、まるでないです。 藤原道長という素晴らしい役柄に挑戦させていただいたことは、とてもありがたく思っています。監督さん、俳優さん、スタッフの皆さん、ドラマに関わった方々と厚みのある良い関係をもてたことは、とても幸せでした。 クランクインから1年半といっても準備からなら約2年ですから、撮影現場が終わるのには寂しさがあり、終わりたくない気持ちがある。そして、あのシーンはああすれば良かったとか、こうすれば良かったとか、考えたりもしています。 ━━藤原道長は栄華を極め、驕り高ぶった人というイメージがありましたが、大石静さんの脚本と柄本さんの演技により、そうではない新しい道長が誕生したと感じました。 第44回では、道長は三人の娘である彰子(見上愛さん)が太皇太后、妍子(倉沢杏菜さん)が皇太后、威子(佐月絵美さん)が中宮になり、まさに絶頂期を迎えています。そして、土御門殿で威子が中宮になったことを祝う宴が開かれる。公卿たち、まひろ、嫡妻の倫子(黒木華さん)のいる中で、道長は歴史的に有名な「この世をば わが世とぞ思ふ望月の 欠けたることもなしと思へば」という和歌を詠みます。 藤原実資(秋山竜次さん)が素晴らしすぎて返歌ができないほどの作品で、皆でこの歌を唱和するのですが、この歌の意味は深すぎる。 その時の道長は、栄華の絶頂で驕り高ぶるどころか、どんどん追い詰められている。半泣きの道長なのです。三条院(木村達成さん)との確執だけでなく、摂政と左大臣の兼務により、公卿たちに良く思われず、藤原公任(町田啓太さん)に内裏の平安を保つためには、左大臣を辞すべきだと言われ、様々な苦悩が押し寄せる中で、和歌を詠んでいる。優雅なだけの歌ではないですよ。 第45回では、四納言(公任、斉信、源俊賢、行成)が、この歌をどう受け止めたかを語り合うのですが、本当に深い意味のある歌だと僕も思いました。
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