『虎に翼』、優三さんとの別れ、花江ちゃんの涙、梅子さんの助言…語り尽くせぬ名場面
2024年9月27日に最終回を迎えたNHKの連続テレビ小説『虎に翼』。あれから3ヵ月経っても、Xには、#虎に翼ロス、#トラつばロスのハッシュタグが出現し、2024年の「ユーキャン新語・流行語大賞」では、伊藤沙莉さんが演じた寅子の「はて?」がノミネートされた。2024年を代表するドラマのひとつといえるだろう。そんな『虎に翼』の総集編(前編・後編)が12月30日午前7時20分からNHK総合で放映される。 【写真】梅子さんが花岡に…『虎に翼』名場面を連続写真で FRaUwebでも、4月に『虎に翼』の放映が始まってから、関連記事を複数掲載してきた。今回、総集編放映に伴って、記事を寄稿いただいたライターの方々や編集者、また、『虎に翼』ファンの方たちに「忘れられない名場面」や「ドラマの魅力」についてコメントいただき、全3編でお伝えする。第3編は、『虎に翼』記事の担当編集者他、『虎に翼』にハマったという方々のコメントを集めてご紹介する。 ※自分にとって印象的だったシーンを最大3つまで選んでいただき、そのシーンを選んだ理由と、『虎に翼』の魅力について書いていただいた。
様々な場面で感じた「自分」を見つめる大切さ
FRaUwebで、福田フクスケさん、田幸和歌子さんなどの『虎に翼』関連の記事を編集した編集者のTさん。 【Tさんが選ぶ、忘れられない、印象的だった場面】 1)学生時代に花岡が自分の発言が梅子を傷つけたことを謝罪する際、「どの自分も嫌いで、どれも偽物というか、本当の俺じゃなくて……」と打ち明け、それに対し梅子が「どれもあなたよ」「たとえ周りに強いられていても、本心じゃなくて演じているだけでも全部、花岡さんなの」「花岡さんが思う“本当の自分”があるなら、大切にしてね」と伝えるシーン(第4週) 自分の嫌な一面を「本当の自分じゃない」と切り離してしまうと、人は自分の言動に責任を持たなくなるし、自分を愛せなくなる、ということがわかりやすく描かれていると思った。「どれもあなたよ」という言葉は、自分に責任と愛を持て、という厳しくもあたたかいメッセージで、梅子さんの人間性と相まって心に響いた。 2)戦地での優三の最期について寅子が知った日、母親のはるが寅子に父・直言のカメラを売ったお金を渡し、「明日はこれを持って出かけてらっしゃい。これは自分のためだけに使いなさい」と言うシーン(第9週) 寅子が贅沢だと拒むと、「贅沢じゃありません。必要なことです」「花江さんも私も、どうしようもなくなったとき、内緒で思い切り贅沢しました。そうするしかなかった」とはる。「自分へのご褒美」という言葉もあるが、つらいときほど自分で自分の心を労ることの大切さに気づかされた。母となった女性は自分より家族を優先しがちで、この時代なら尚更。自分のためだけにお金を使うことは、自分のためだけに時間を使うことでもあり、その時間がないと自分の心とは向き合えないのだなと思った。 3)落ち込んでいる寅子の自宅に航一が突然訪ねてきて、「読まなければならない書類が溜まっていて。読む場所はどこでも構いませんので」と言って家に上がるシーン(第19週) ロマンチックな表現を一切使っていないのに、「そばにいたい」ということがひしひしと伝わってくる、不器用ながらも秀逸な愛の告白の言葉だと思った。家に上がっても、特に話さないのがまたよかった。相手の問題を解決する術がないとき、かける言葉が見つからないとき、ただそばにいるだけでも救いになることがある。 【Tさんが感じた『虎に翼』の魅力】 100年前の物語を通して今の問題が丁寧に鮮やかに描かれている。同じ問題がいまも解決していない、あるいは繰り返されていることも示唆されている。寅子という主人公だけでなく、その周縁の登場人物たちも魅力的で、一人ひとりの生き様にさまざまな社会問題が反映されているから、私たちにそれらの問題が高い解像度で届く。そして、法と人権という重くカタイ題材ながらも、ユーモアがたっぷりなところも魅力。寅子の変顔、ダンスは衝撃だった。