双子を出産した「有村智恵」が語る“プロゴルファー”と“母親”との葛藤 「どちらかに決めないといけないのはおかしい」
その実力と人気で女子プロゴルフ界を牽引してきた有村智恵さん(36)。【前編】では、引退を覚悟してまで競技を離れて「妊活」に専念することを決めた理由や、妊娠や出産にまつわるプロゴルファーならではの悩みなどについて聞いた。【後編】では、年齢を重ね、妊娠・出産を経て実感した女子プロゴルファーとしての悩みや、ゴルファーとしての今後などについて語ってもらった。 【写真】宮里藍、原江里菜も…高校時代の有村さんはこちら ※【前編】<プロゴルファー「有村智恵」がゴルフを離れて“妊活”に専念した理由 「妊娠する体とゴルフをする体は正反対なんです」>より続く * * * 「今すごく大変だなと感じるのは、妊娠・出産前の体に近い状態まで戻すことですね。やっぱり体が大きく変わってしまったので……」 と有村さんは話す。 「簡単に言うと、猫背になりました。競技に出ていたときは腹筋と体幹を使って背筋を立てることをものすごく大事にしていたんですけど、妊娠中はおなかを守ったり、出産後は子どもを抱っこしたりで、全体的に体がまるっとしてしまって……。子育てをしていると、必ずしも体にとっていい姿勢や、いいポジションで過ごせないことが多いですね」 こういった体や生活の変化は、やはりプロゴルファーである有村さんにとっては気にかかるのだという。 「アスリートとしては、体は癖になる前に戻したほうがいいと当然わかってはいるんですが、一方で出産直後の母親としては、そこで無理すると良くないし、どうしようみたいな……。ゴルフに戻るために一刻も早く自分の体をケアしたいという気持ちと、出産からまだ3カ月弱(取材当時)なので、すぐに動くのは体に障るっていう葛藤がすごくあって、そこの兼ね合いが自分のなかで行ったり来たりしています。また、帝王切開で出産したので、腹筋の力も弱まってしまっていて、それも不安ですね……」
■キャリアか子育てかで悩む女子選手が多くいる また、年齢を重ね、妊娠・出産を経験したことで、自身の将来についても思いを巡らすことが多くなったという。 「20代ってゴルフのことだけ考えていればよかったんです。でも、年齢を重ねていくとそういうわけにもいかなくなるなって。出産のことや家族のこと、自分の体のこととか、競技以外ですごく悩まなきゃいけないことも増えていきました。特に私は子育てとゴルフの両立について考えることが多くて。両立させたいと思っても、ツアーに参加しながらだと難しくて、でもそれ以外の選択肢が少ないなと実感しました。0か100か、つまりゴルフ一筋の人生を歩むのか、それ以外の人生を取るのか、どちらかに決めないといけないのって何かおかしいなとも思いました」 ツアーで同世代の選手と話をしてみると、有村さんと同じ悩みを抱えている選手も多かったという。 「ほかの選手と将来の話をすると、私と同じようにキャリアか子どもかで悩んでいる選手がたくさんいて、この状況を何とかできないかなと考えるようになりました。そのなかで、たとえば大会が月1回ペースで、2~3日家にいない生活だったら、ゴルフと育児って全然両立できるのになって思うようになりました。そういう試合があったらいいのにという思いが少しずつ出てきたんです」