「うちの子、発達障害かも?」と思ったら。最初の相談先、本人やきょうだいへの伝え方について言語聴覚士 原哲也先生が答えます
「療育」は二次障害を防ぎ、本人が幸せに生きるためのもの
■療育とは? 発達障害の子のサポートとして耳にする「療育」という言葉。意外とよくわからない人も多いのではないでしょうか。 原先生によると、「療育は、発達障害の特性がある子が持つ生活のしにくさを軽減し、二次障害と言われる、うつや無気力といった症状を防ぐためのものです。しかし、それはあくまでもスタートライン。目指したいのは、“今と将来に向けて、本人が幸せを感じて生きること”」だと話します。 この「幸せ」な状態について、原先生は「多様な仲間とともに、自分らしく、前向きに、ワクワクしながらやりたいことにチャレンジしている人」という、慶應義塾大学の前野隆司教授の言葉を挙げます。 療育の場は、本人がこのような状態で過ごすために利用する場と考えると、イメージしやすくなるのではないでしょうか。 ■どうしたら療育を利用できる? では、療育を利用するにはどうしたらいいのでしょうか。原先生の著書では、療育を利用するまでの流れについて、いくつかの実例が紹介されています。 療育ができる場所としては ①医療機関 ②児童発達支援センター(療育センター) ③児童発達支援事業所(就学前) ④放課後等デイサービス(就学後) があります。具体的な施設等がわからない場合は、保健センターや児童発達支援センター、市区町村の窓口などに相談すると、つないでもらうことができます。 さまざまな療育機関がありますが、選ぶ際には「①国家資格を有する人がいること②子どもの状態を客観的に見て、その子にあった対応ができているかどうか」の2点をポイントにするのが良いそうです。
自分たち親子のサポーターを増やすことが大切
子どもに発達障害があるかもしれないとわかると、保護者はつい子どものことばかりに目がいってしまいがちです。しかし、保護者が孤立感や孤独感を感じないようにすることが大切だと、原先生はおっしゃいます。 「まずは保護者自身の不安を相談できる場所をみつけましょう。そこをきっかけに、福祉などさまざまな社会資源の情報が集まり、親子を取り巻く人たちが少しずつ増えていきます。 発達に関する知識や経験を持っている人たちに出会うことは、療育の根っこであり、子どもの生活のしづらさを軽減して二次障害を防ぐ肝になります。“私が一人でがんばらなきゃ”という心のロックを外し、不安です、困っていますとSOSを発して、なるべく多くのサポーターを作りましょう」と語ってくれました。 今、まさに困り感を抱えている保護者がおられたら、弱音を吐ける場所を探し、ぜひ多くの人とつながっていってもらえたらと思います。 【お話を聞いたのは】 原哲也さん 原 哲也|言語聴覚士・社会福祉士 一般社団法人 WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事。明治学院大学社会学部社会福祉学科卒業、国立身体障害者リハビリテーション学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダのブリティッシュコロンビア州の障害者グループホーム、東京都文京区の障害者施設職員、長野県の信濃医療福祉センター・リハビリテーション部での勤務の後、『発達障害のある子の家族を幸せにする』ことを志に、一般社団法人 WAKUWAKU PROJECT JAPANを長野県諏訪市に創設。発達障害のある子のプライベートレッスンやワークショップ、保育士や教諭を対象にした講座を運営している。著書に『発達障害のある子と家族が幸せになる方法』(学苑社)、『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)がある。
取材・文/佐藤麻貴 構成/HugKum編集部