ブレイブルーパスの小鍛治悠太、旧友が流行らせたお馴染みのコールに喜び。
西の文化が東にやって来て久しい。 「きむら! はっしもっと! こっかっじ!」 1月5日。東京・味の素スタジアムのラグビーの試合で響くのは、ホストの東芝ブレイブルーパス東京の選手名だ。 互いのFWが8人ずつで組み合うスクラムのたび、その時々で最前列にいる面子の名がコールされる。ハーフタイムショーなどのために訪れたアイドルグループ『私立恵比寿中学』のメンバーも、見よう見まねで叫んでいた。 この応援方法は、もともと関西の大学ラグビーシーンで定着したものだ。それがなぜ、国内トップにあたるリーグワンの関東拠点のクラブを支えているのか。 「あれは、去年からだったかな…」 こう切り出すのは小鍛治悠太。コベルコ神戸スティーラーズを32-26で下した5日にも「こっかっじ!」とエールを送られた26歳だ。 天理大の4年生PRだった2020年度には、同大史上初の大学選手権優勝を達成。しかし当時は、折からのウイルス禍で声を出しての応援が制限されていた。スタンドの控え部員は、お馴染みのエールを送れずにいた。 しかし、ブレイブルーパス行きの小鍛治へ断言したようだ。 「社会人になったら、行くわ!」 それぞれが新しい生活を始めると、徐々に社会は元の姿となってゆく。そして歓声が問題になりづらくなった「去年」あたりから、旧友は約束を果たすべく会場でシャウトした。印象的なスクラムの音頭は、いつしか、天理大の元部員がいなくとも自然と起こるようになった。小鍛治は頷く。 「いつの間にか、他のお客さんもやってくれるようになって。(声援は)聞こえます。特に、メガホンを持ってきてくれた時は!」 前年度は、旧トップリーグ時代の14シーズン前以来となる日本一を達成。再び王座に立つのを期待される中、身長176センチ、体重109キロは新しい地平に立つべく献身する。 昨季活躍しながら入れなかった日本代表に初選出されるべく、己と向き合う。 どうすれば選考に絡めるかを知るべく、昨年就任したエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチへ電話している。通訳を介して伝えられたメッセージを受け、スクラムのほかタックルでも光るつもりだ。 「世界一のチョップタックラーになれって、言われました」 走者の足元を刈るような「チョップタックル」は、天理大にいた頃からの得意技だ。 「自分の武器やと思っているので、めっちゃ意識しています。もちろん、上(半身)にも激しく行くんですけど」 11日には神奈川・Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsuで、浦安D-Rocksとぶつかる。開幕4連勝を狙う。 (文:向 風見也)