生前贈与を受けても相続放棄できる? 注意点やリスク、対策を弁護士が解説
5. 相続放棄後に遺留分侵害額請求を受けることはある?
遺留分とは、相続人に定められた「最低限の遺産の取り分」です。生前贈与を受けた者が後に相続放棄をした場合、ほかの相続人から遺留分を侵害したとして請求されることはあるのでしょうか。 5-1. 通常は遺留分侵害額請求を受けることはない 相続放棄をした場合、その者は初めから相続人とならなかったものとみなされます。生前贈与を受けた後に相続放棄をした場合、それは相続人以外の者に対する生前贈与になります。遺留分の算定の基礎となる生前贈与の範囲が限られますので、基本的には遺留分侵害額請求を受けることはありません。 5-2. 遺留分侵害額請求を受ける可能性があるケース 相続開始前の1年以内にした生前贈与の金額が高い場合には、遺留分侵害額請求を受ける可能性もあります。また、生前贈与の当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、その生前贈与の金額次第で、遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
6. 相続放棄以外で借金を受け継がせない方法
6-1. 相続人が限定承認を行う 限定承認とは、相続によって得るプラスの財産を上限として相続をするもので、相続で引き継いだプラスの財産からマイナスの財産を清算して、残ったプラス財産があれば、相続人がこれを相続することができます。 事案によっては、プラスの財産が残らない可能性もありますが、少なくとも借金等のマイナスの財産を承継することはなくなります。なお、他に共同相続人がいる場合には、相続人全員が共同して限定承認を行う必要がある点には注意が必要です。 6-2. 生前に債務整理をする 生前に破産等の債務整理を行うことで、借金を承継させないことができます。
7.生前贈与と相続放棄に関するよくある質問
Q. 生前贈与でプラスの財産だけもらい、相続放棄するのはあり? 最初から相続放棄をするつもりで、プラスの財産について生前贈与を行うことは、債権者を害する行為であるとして、債権者から詐害行為取消権を行使される可能性があります。なお、債権者が相続放棄について詐害行為取消権を行使することはできません。あくまで取り消されるのは、生前贈与の方です。 これは、相続放棄は他人の意思によって相続を承認するか放棄するかを強制するべきではないところ、相続放棄に対して詐害行為取消権の行使を認めてしまうと、相続の承認を強制することと同じ結果になってしまい妥当でないことなどが理由です。 Q. 相続放棄をしたら生前贈与された土地はどうなる? 相続放棄と生前贈与については、それぞれ別個独立した無関係のものですので、土地を生前贈与された者が相続放棄をしても、その土地は生前贈与を受けた者が所有者であることに変わりはありません。相続放棄も成立します。 Q. 生前贈与は単純承認になって相続放棄ができなくなる? 生前贈与は、当然ながら相続開始前になされるものであり、相続開始前に相続の承認がなされるということはありませんので、単純承認とはなりません。したがって、生前贈与がなされた場合でも、相続放棄をすることはできます。