イチローやジョブズ...成功する人が「独自のルーティン」を大切にしている理由
一瞬一瞬を大事にする習慣
科学的な観点だけでなく、仏教でも習慣の大切さは説かれている。 曹洞宗徳雄山建功寺の住職で禅僧の枡野俊明師は坐禅や読経といった修行は「自分が生かされている」ことに気づくためにあると言う。 「坐禅を組んでじっとしていると、自分の心臓が動いていることに気づきます。もし『心臓を10分止めてください』と言われても、それは誰にもできない。自分を超えた大きな存在が心臓を動かし、血を巡らせ、私たちは生きています。この生かされている命をいかに大事にするか、そのために習慣があるのです」 禅では人の一生は、一瞬の積み重ねだと捉えられている。 枡野師は、習慣を通して一瞬一瞬を大事にすることが、結果的に一生を丁寧に築き上げて行くことに繋がると説く。 「禅には『喫茶喫飯』という言葉があります。お茶を飲んでいる時には、ただ飲むことだけに集中し、ご飯を食べる時には、食べることだけに集中すべきだという意味です。最近はスマートフォンを見ながら、食事をする人が多い。効率が良いように思うかもしれないけれど、どちらにも集中できていないので、振り返るとどんな味だったか覚えていない。それは実は何も楽しんでいないのと同じです」 とはいえ、いきなり修行僧のようなルーティンを実践することは難しい。
掃除は習慣化の基本
そこでまずは年末年始のイベントを利用してみるのがいいだろう。 枡野師は言う。 「除夜の鐘は、鳴らすことで1年間で積み重ねてきた業をリセットする行事です。これを聞いて無垢な気持ちで新年を迎えましょう。また掃除をして、1年間たまった塵や埃を落とすのもいいでしょう。年末の大掃除には心についた塵も一緒に落とすという意味合いもあるのです」 前出の菅原氏も、掃除は「習慣化」の基本だと言う。 「自宅を丸ごと綺麗にしようという目標を立てたら、そのプロセスを『1部屋ごとに綺麗にする』という小さな目標に分類します。片付けることができたら、脳内でドーパミンが分泌され、達成感が得られます。また『掃除をしたい』と思えるようになります」 イングランドの詩人、ジョン・ドライデンは「はじめは人が習慣をつくり、それから習慣が人をつくる」という言葉を残した。 これを機に新たな習慣を始めてみてはいかがだろうか。 「週刊現代」2024年12月28・2025年1月4日号より ……・・ 【つづきを読む】人生の幸運をつかむのに、頭で考えてはいけない!東京大学名誉教授が語る「習慣の極意」《養老孟司さんインタビュー》
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