【独自取材】「藤井聡太さんしか見ていない」王座戦・挑戦者 永瀬九段が語る ”尊敬する棋士”藤井七冠への想い「人生は年齢ではないことを、間近で見せてくれる存在」一人称を”私”に変更したその理由…
2024年9月4日から、第72期王座戦五番勝負が始まる。藤井聡太王座が迎え撃つのは、前王座・永瀬拓矢九段。あの激闘から約1年、研究の鬼・永瀬九段は藤井七冠をどのように見てきたのか。 「尊敬していますからね、すごいんですよ」と、取材中に何度も藤井八冠に対する思いを語った永瀬九段。その理由を、中京テレビ将棋担当・柳貴斗記者が深掘る。 【動画で見る】王座戦 挑戦者・永瀬九段が語る 藤井七冠への思い #将棋 #藤井聡太 #永瀬拓矢
挑戦者として挑む王座戦「運命を感じる」
「ここで一つ結果を出すことができて良かったのと、王座戦というのは”運命”というかそういうものも感じます」 王座への挑戦権を獲得した永瀬拓矢九段はそう語った。 去年の第71期王座戦。王座五連覇と「名誉王座」をかけた永瀬九段は、“王座のタイトル保持者”として藤井聡太竜王・名人を迎え撃った。 結果は、皆さんが知るところではあるが、藤井竜王・名人が王座のタイトルを奪取。8大タイトルの独占を果たした。 2024年7月22日に行われた王座戦挑戦者決定記者会見にて、「去年の王座戦やはり自分としては内容が良かっただけに、悔いが残るシリーズになってしまいました」と悔しさを滲ませた永瀬九段。 去年の王座戦、結果だけを見れば、藤井竜王・名人の3勝1敗だが、シリーズの多くで永瀬九段が序盤・中盤で優勢を築き、有利な状態で終盤戦に突入していた。 果たして、敗因はなんだったのか?今年6月に話を伺ったとき、永瀬九段はこう答えていた。 「個人的には棋力(将棋の力)はあまり変わらないと思ったので、結果としてそうなったのは残念だなと思いましたね」 「藤井さんは、序盤も中盤も本来は強いわけなので、こちらが上手くやったというのがあったとは思う」 「藤井さんがずば抜けている点(終盤)以外でも、こちらが勝っている点も多かったかなとは思いますね」 永瀬九段自身も王座戦を振り返ったときに、”内容は良かった”、”上手く指せた”、”序盤中盤で勝っていた”という印象を受けたようだが、こうも語っていた。 「こちらが上手く指しすぎていたので、藤井さんが思い描いた展開にはならなくて。藤井さんはずば抜けた終盤力というものがあるんですけど、その終盤力一つで負かされてしまったかなと」 藤井竜王・名人のずば抜けた終盤力でひっくり返されてしまった。 語弊はあるかもしれないが、そんな心境を筆者は感じ取った。 一方の藤井竜王・名人は、2024年8月29日に行われた永世王位資格獲得後の会見で、永瀬九段への思いをこう語っていた。 「永瀬九段には普段からVS(練習将棋)をして頂いていて、今はタイトルの期間中と言うことで中断しているんですけど、永瀬九段の強さというのは本当によく感じています」 「まずは序盤で遅れを取らないようにすることが、必要になるかなと思っています」 タイトル保持者と挑戦者を入れ替えて行われる、今年の第72期王座戦五番勝負。永瀬九段にとって、相手は、去年と同様に練習パートナーで手の内を知り尽くした藤井竜王・名人。 まさにこの組み合わせでの王座戦は、前述で永瀬九段も述べたように”運命”だ。 運命のいたずらとしかいいようがない。 去年のような激闘を、我々は再び見ることになるのだろう。